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生物の記憶装置 ― DNAレコーダ

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DNAを記憶媒体として利用する。

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Credit:  “The Structure of DNA”, MITx Bio

 

データの記録の限界

現代において、日々大量の情報が発生しており、記録方法も絶えず進歩している。30年前、標準的なデータの記録媒体であったフロッピーディスクは現在では、ほとんど使われなくなっている。

 

バックグラウンド

高名な物理学者であった故リチャード・P・ファインマンは半世紀も前(分子生物学が現れる前)にDNAが記録媒体としての可能性を予言しており、彼の

アイデアは独創的であり、科学者に方向性を与えてくれるものであった。

更に、1994年に南カリフォルニア教授のレオナルド・エーデルマンはDNAをコンピュータとして使用してデータを記録させ数学の問題を解くことに成功し、DNAは同じ大きさのディスクと比較して1012倍のデータが記憶できることを突き止めている。

 

普遍的な記録手段

生物は数億年もDNAに情報を記憶しており、普遍的な記録手段として、現在でも情報が読み込まれている。現代の細菌は数100万年前に琥珀に閉じ込められた昆虫から遺伝子を読み込むことができる。

 

DNAに情報を記録

7月12日ニューヨーク・タイムズ電子版は米国ハーバード大学の研究者は映像を生きた細胞のDNAに記録することに成功したとする記事を掲載した。

 

ゲノムを記憶装置として使用する

この研究はゲノムが大量のデータを記憶するための装置として使用できる可能性を示唆している。

研究者は情報を細菌のDNAに書き込み、900万個のコピーを作り出すことに成功した。

この研究では、細菌を人体の細胞に寄り添うようにプログラムし、細胞の活動を記録させることを目標にしている。

 

記録方法

研究は白黒映像のピクセルをDNAコードに割り当てることから開始された。

映像の全体を表すDNA配列が作られ、新しい遺伝子編集技術であるCrisprによりDNA配列が大腸菌のゲノムに入れられた。

細菌は遺伝子を編集しても、成長し増殖することから、ゲノムに記録された映像は子孫にそのまま引き継がれる。

 

研究の用途

人が体調が悪くなった時、医師は体内から細菌を取り出し、記録を再生できるかもしれない。すなわち、細菌を飛行機に積み込まれているブラックボックスのように機能させるものである。

 

可能性の高い研究テーマ

最初の研究テーマは脳である可能性が高い。脳には860億個のニューロンがあり、これらの働きを知ることは容易ではない。

現在、電極を使って一度に1個のニューロンの働きを調べているが、脳に860万個の電極を取り付けることは不可能である。しかし、細菌の遺伝子を編集することにより可能になるかもしれない。

このアイデアでは細菌を記憶装置として機能するように遺伝子を組み替えて、血流に乗せて脳に送り、記録させる。その後、細菌を取り出し、細菌のDNAを調べて脳内のニューロンの活動を知ることができる。

DNAの1分子の大きさや情報の記憶量については不明な点が多いが、生物工学は想定より遥かに早く進歩おり、DNAに情報を記憶する奇抜なアイデアも近い将来、実用化されるかもしれない。

 

参考資料

Gina Kolata, “Who Needs Hard Drives? Scientists Store Film Clip in DNA”, New York Times JULY 12, 2017

The Structure of DNA”, MITx Bio

 

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