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適者生存のための遺伝子変異

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種の絶滅を防ぐメカニズム

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Credit:  ホモ・サピエンスのイメージ、“Homo Sapiens 1”、 Najveca Baza Dokumentaraca

 

適者生存

現代人にとって、適者生存として、小柄、低運動能力、及び関節痛は考えられない。しかし、人類は進化の過程で、生存のためこれらの形質を甘受してきた。

 

環境による遺伝子変異

氷河期に、人類の祖先が寒冷地に移動した時、厳しい環境で生き延びるために身長の低下や変形性関節症のリスクが高くなる遺伝子変異が行われた。

このような形質は現在人では望ましくないが、6万年前のアフリカでは人類の生存のために必要であった。

 

進化の代償

人類の進化には代償を伴うものが多かった。

身長が低いと放熱が減り、四肢の凍傷が防げ、氷で滑って致命的な骨折のリスクを減らすことができた。しかし、この遺伝子は現代のような長寿の社会では関節炎になる可能性が高い。

 

GDF5遺伝子

1990年代に骨格の成長にリンクしたGDF5遺伝子の変異に注目された。この遺伝子は骨の成長と関節の形成に関係しており、DNA配列がGROW1の部位でどのように発現しているかが調べられた。

この結果DNAの1つのヌクレオチドにおける変化が突き止められた。

欧州やアジアの人々で変化が見られたが、アフリカの人々では変化はほとんど見られなかった。変異は偶発的に起こったかを調べるために、マウスでヌクレオチドの変化が調べられた。結果として、この遺伝子は人間の場合のように、長い骨を短くすることが判明した。

変異は欧州とアジアの人口の50%以上で生じていた。関節炎のリスクの増加は軽微であっても、多くの人々に重大な影響を与えていた。

 

鎌状赤血球貧血

同様な進化のパラドックスは鎌状赤血球貧血でも見られた。この遺伝病では赤血球の変形により酸素を十分に体の全身に送ることができなくなる。遺伝子変異によりアフリカの多くの人々に、この貧血が現れたが、マラリア感染を防ぐことができた。

 

ゲノムと人類の進化

ゲノムと進化の歴史は複雑なため、パラドックスと思える形質が人間の進化の過程で現れる。今後、研究が進み、ゲノムが人類の生態にどのように影響してきたかの解明と、複雑な人類の進化の過程の理解により、医学の進歩と人間の健康の向上が期待される。

 

参考資料

Aneri Pattani, “They Were Shorter and at Risk for Arthritis, but They Survived an Ice Age”, New York Times JULY 6, 2017

Homo Sapiens 1”, Najveca Baza Dokumentaraca

 

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