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敗血症 ― 心臓発作や脳卒中と同様な致死性の疾患

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Those who suspect shall be saved (疑う者は救われる)

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Photo:  敗血症の症状があったら救急搬送が必要

 

幼児の突然の病気

ニューヨーク在住の医師が、朝、出勤前、彼の幼い息子は元気にしていた。勤務を終え、帰宅すると、彼の息子は青白い顔色で、高熱で弱々しく妻の腕に抱えられていた。

父親は息子が死んでいるのではないかと不安になった。元気にしていた息子が急に重病になってしまい、感染病の専門医としての長年の経験があっても、彼は恐怖を隠すことは出来なかった。

 

感染症による命に関わる病態

父親は感染症の専門医として、この病気は時間との戦いであることを承知していたが、彼の悪い予感が現実になってしまった。幼い息子は敗血症にかかってしまった。敗血症は急激に悪化し手に負えなくなる感染症が原因の命にかかわる病態である。

父親は直ちに息子を病院に連れていき、診察を受けさせた。数時間以内に広域抗生物質を投与することができ、幸いにも息子は数日で回復することができた。

 

敗血症による死亡

このケースでは、息子の父親が感染症の専門医であることが幸いしたが、敗血症患者の多くが幸運とは限らない。米国では毎年100万人から300万人が敗血症と診断され、そのうち15%から30%の患者が亡くなっている。敗血症に最もかかりやすい人は65歳以上の高齢者と小児である。毎年42,000人の小児が敗血症にかかり、4,400人が死亡している。

 

感染症の病理

感染により全身に炎症が起こると、免疫系は感染に対して強力な攻撃を行う。この結果、敗血症が起こる。敗血症が起こると、血栓ができ、血管が漏れやすくなり、臓器への血流が妨げられる。血圧が低下し、多臓器不全が起こり、心臓がダメージを受け、死に至る。

すなわち、敗血症にかかると、体が自身の免疫系から攻撃されてしまう。

 

疫学

敗血症は増加傾向にある。2000年から2008年にかけて敗血症の治療の入院患者数は2倍になっている。原因として、高齢者の増加、耐性菌の増加、及び診断精度の向上により敗血症の診断が増えたことがあげられる。

敗血症は病院での死亡の約半数を占めているが、ガンなどの他の重大な基礎疾患の合併症として発症するため死因としては数えられていないのが実情である。

多くの日本人は敗血症という病名は聞いたことがあっても、兆候や症状をわかっている人は少ない(医療従事者も含めて)。

敗血症に最もかかりやすい人は65歳以上の高齢者であるが、1歳未満の乳児や、糖尿病や喫煙により免疫機能が低下している人もかかりやすい。

疾病対策予防センター(CDC)の最新の研究によると、敗血症の多くは肺、尿路、皮膚、及び胃腸感染による発症し、感染源の多くは医療機関や介護施設であることが判明している。

 

CDCによる啓蒙活動

米国では、CDCにより、敗血症を周知させるためのキャンペーンが行われている。それによれば、近親者が寒気又は発熱、極度の痛み又は不快感、皮膚の湿り気、昏迷又は方向感覚の喪失、息切れ、及び心拍数の上昇など敗血症の症状がある場合は、直ちに医師の診察を受けるように勧告している。

キャンペーンでは更に、敗血症の可能性はないか医師に質問することを推奨している。

 

敗血症の疑いがあるとき

敗血症は心臓発作や脳卒中のように命にかかわる病態であると認識し、家庭医のスケジュールに合わせずに、直ちに救急病院へ搬送しなければならない。

血圧が低下し臓器への血流が妨げられると、敗血症性ショックが現れる。抗生剤投与を行いと、患者は1時間毎に8%ずつ死亡率が高くなる。

敗血症の可能性を考慮して、直ちに治療を受ける必要がある。慢性疾患の治療、ワクチン接種、及び抗生剤の適切な投与が必要である。

 

参考資料:Roni Caryn Rabin, “Could It Be Sepsis? C.D.C. Wants More People to Ask”, New York Times 2016-9-19