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心臓震盪 ― 前胸部の致死的な強打

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前胸部への強打がスポーツにおける最大の原因である。

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Photo:  訓練用AED、LIFEPAK CR-T

 

前胸部強打による心停止

前胸部に突然非貫通性で一見無害の衝撃をうけると、心室細動により心停止、その後死に至る。この病態を心臓震盪とよぶ。

心臓震盪は主に野球のボールが胸にあたって起こるが、テニスボールやソフトボールなど小型のボールやサッカーなどの体がぶつかり合うスポーツで選手の前胸部に衝撃を受けて発症する。

 

心臓震盪の病態

心臓震盪の生存者は以前より多くなっている。心肺蘇生の講習が各地で行われており、周りの人による蘇生により患者が助かるケースも増えてきている。しかし、この病態の深刻度の理解の不足から、心肺蘇生の遅れから、患者が死亡するケースも依然多い。

死を免れるためには効果的に心肺蘇生と除細動を強打から3分以内に行わなければならない。蘇生が3分以上遅れた場合、生存率は5%未満となる。

 

症状

患者は反応が無くなり、無呼吸、無脈拍、無心拍になる。患者の皮膚は青白くなる(チアノーゼが現れる)。

 

病理

心臓震盪では、前胸部への衝撃により左心室の圧力が上昇する。これにより、停止していたKATP機械受容チャネルが活動し、再分極とSTセグメント上昇する。衝撃によっても早期の心室脱分極が生じ、虚血状態で心室細動が起こる。

 

患者の蘇生

心臓震盪のような心室細動では、速やかな心肺蘇生と除細動により生存率を大幅に向上させることができる。

AED(自動体外式除細動器)を準備する間、患者に心肺蘇生を行う必要がある。最後の心臓圧迫とAEDによるショックの間隔が短いほど除細動の成功率が高くなる。

 

AED

蘇生を効果的に行うためには速やかの除細動が必要である。除細動を行うまでの時間が心停止から蘇生するための最も重要な決定因子である。心室細動は数分で心停止になるため、除細動の成功する可能性は時間の経過と共に急激に低下する。

救急車は要請してから5分以内で到着することがないため、心肺蘇生とAEDが心肺停止患者を救うことになる。

AEDは自動的に患者の心臓の状態を測定し、電気ショックを与えて、致死性の高い心室細動を止めることができる。AEDは更に1歳以上の乳児にも使用することができる。

 

参考資料:”Commotio Cordis”, MedScape