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電離放射線傷害の病理

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イオンや遊離基が遺伝子を傷つけ突然変異や細胞死が起こる。

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Credit: The Structure of DNA, MITx Bio

 

イオンや遊離基による細胞の損傷

電離放射線は原子及び分子のランダムな衝突によりイオンや遊離基が発生し化学結合を切断するため、他の分子が変化し、放射線を吸収した細胞や隣接組織が損傷する。

電離放射線によりDNAの二重らせんの一本が切断しても正確に修復できるが、両方共切断すると修復はできなく、突然変異や細胞死の原因となる。

更に、強度な電離放射線(陽子、アルファー粒子)を受けた場合は弱い電離放射線(X線、γ線)と比較して一般的に修復がうまく出来ない。

DNAで修復できなかった場合は、突然変異となって現れる確率は1Sv、1遺伝子座につき約10-5から10-6である。遺伝子を単一のイオン分子が横切っただけで突然変異が生じることになる。

特に、分裂細胞の遺伝子、染色体、及びその他の重要な細胞小器官が放射線で損傷すると、細胞は生存できなくなる。

増殖能力に関しては、分裂細胞の生存率は放射線量に指数関数的に逆比例する。1から2Svの線量を短時間で被爆すると、分裂細胞の生存率は約50%に低下する。

リンパ球や卵母細胞は分裂間期で死滅するのに対して、他のほとんどの細胞は有糸分裂で死滅する。

ほとんどの細胞は0.5Sv未満の線量では死滅せず、生殖器以外のほとんどの臓器には明確な損傷は起こらない。

 

生体線量計

放射線により染色体数と構造が変化することから、リンパ球における変化は生体線量計として利用することができる。

 

細胞死の影響

分裂前駆細胞が大量に死滅すると代謝の活発な上皮、骨髄、及び腸管上皮などの組織における老化した細胞を規則正しく入れ替えることができなくなる。

この結果、細胞死のタイミングに変化が起こり、肝臓や血管の内皮細胞などの修復が遅れてしまう。

被爆した組織が少ないか、線量が緩やかに蓄積した場合は、被爆の効果は順応反応および生存細胞による補償的再生過形成により打ち消される。

 

関連情報:

電離放射線被爆 ― 突然変異、発癌、及び催奇