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放射線肺障害 ― 肺癌の放射線療法による副作用

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短期間で寛解するが、慢性化することもある。

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Photo: 放射線標識

 

事故又は作業による放射線被曝は全身に障害が起こり、肺に対しては、最も毒性が強い。

 

放射線療法による肺炎

悪性腫瘍の治療では併用療法として放射線が使用される。副作用として肺炎が起こり、肺線維症に進行することがある。

 

疫学

放射線治療により、患者の約50%で放射線障害が現れる。照射時間と線量により障害の程度が異なる。

大部分の患者では、重度の放射線肺障害は現れない。しかし、肺炎の放射線療法では約10から15%の患者に放射線肺障害が起こる。

 

臨床症状

放射線肺障害の症状は時間の経過で変化する。

放射線暴露の直後では肺胞が損傷し、軽度の肺胞炎、炎症細胞の動員、毛細血管漏出、及び肺浮腫が現れる。

これらの病変では自覚症状がないため、肺損傷に気づきにくいが、胸部X線検査では病変が捉えられる。これらの病変は1から3ヶ月で寛解する。

一部の患者では、肺胞が落屑し空隙がタンパク質性の液体で満たされる。この病態を放射線肺炎とよぶ。患者には咳、呼吸困難、発熱又は胸膜炎性胸痛が現れる。

障害が重度な場合は低酸素血症性呼吸障害が現れる。この病態は暴露から3から6ヶ月で寛解する。肺胞浮腫が寛解し損傷した肺胞が治癒する。

この期間で、患者の症状は改善するが、線維芽細胞が増殖し肺にコラーゲンが沈着する。

一部の患者では、この病態が見逃され、重大な線維症、肺胞、毛細血管の消失、肺の容積減少による肺活量低下を特徴とする拘束性肺疾患が起こる。

 

診断

放射線療法を受けると、患者には呼吸器に副作用が現れ、胸部X線偏検査では陰影が現れる。診断では患者の病歴の問診と胸部X線検査が行われる。

患者が肺炎にかかっていると、胸部X線検査で肺胞に液体の貯留又は硬化が認められる。放射線肺障害が進行すると、間質パターン及び線維症が現れる。

放射線で直接被爆した肺組織のみに障害が現れ、X線検査では障害は陰影として現れる。

臨床病歴やX線検査で診断ができないときは、気管支肺胞洗浄又は生検により確定診断を行う。

 

治療と予防

治療の中心はコルチコステロイドの薬剤療法である。ステロイド剤は数週間又は数カ月かけて減薬しなければならない。

治療により急激に効果が現れる事があるが、治療を止めると症状が再発するリスクが高い。コルチコステロイドが効かない場合は免疫抑制剤が使用可能である。

 

予後

放射線肺障害から2年以内に、症状は安定し肺の機能は向上する。症状が慢性化すると、肺性高血圧や低酸素性呼吸障害などの間質性肺疾患に進行するリスクが高い。

 

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