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酸素投与による肺の障害

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高濃度の酸素供与は肺に有害である。

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Photo: 酸素吸入用フェイスマスク

 

低酸素呼吸障害では酸素投与が必要になる。

急性呼吸窮迫症候群などの重度の低酸素症の場合、高濃度の酸素供与が長時間に渡り必要になる。しかし、空気に含まれている酸素より高濃度の酸素は肺に有害であることが知られている。

 

病理

気道での酸素濃度が高いと、活性酸素や遊離基が増加する。常態では気道の上皮及び肺胞における抗酸化メカニズムによりこれらの分子の効果を無効にしている。

しかし、病気にかかると、防御メカニズムは機能しなくなる。

活性酸素や遊離基は細胞を直接酸化する。細胞が損傷することにより炎症が強くなり、肺で進行している炎症反応と相乗的に作用する可能性がある。この結果、肺胞に浮腫が生じ、ガラス上の膜が形成され、低酸素血症、並びに肺胞及び毛細血管の線維化や閉塞が生じる。

換気と灌流の不適合により、酸素が補給されるより早く血液から取り除かれると、空隙から窒素の流出により吸収性無気肺が生じる。

 

臨床症状と診断

肺に障害を起こす高酸素症のレベルは明確になっていないが、50から60%の酸素を6時間投与するとこの障害が現れると考えられている。

酸素中毒は主に人工呼吸器を使用している低酸素呼吸障害患者に見られる。

酸素投与により気管気管支炎起こり、臨床的な症状として気道に紅斑が認められ、咳や呼吸困難が現れる。この病態では、粘膜繊毛クリアランスが損われ、吸収性無気肺と共に、分泌物の滞留が生じる。

酸素中毒患者は一般に肺実組織に障害がある。

患者は気腔疾患、肺拡張不全、硬化症、低酸素症、及びびまん性肺胞障害の悪化の可能性があるが、これらが酸素療法に関係しているかは不明である。他の原因で急性の肺障害として現れている可能性もある。

 

治療

酸素中毒のしきい値は不明であるため、低酸素血症性呼吸障害の治療では許容される酸素飽和度を回復するために必要で最小限の吸気酸素濃度で換気を行う必要がある。

動脈血酸素濃度90%は酸素分圧55から60mmHgに相当して最小許容濃度と考えられている。しかし、急性呼吸窮迫症候群などの重度の低酸素症では100%近くの吸気酸素濃度が必要である。

 

参考文献: Anuj Chawla, et. al. “Oxygen Toxicity