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胃癌の治療と予後 ― 根治手術と緩和手術

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早期なら完治し、末期なら余命1年未満  

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Photo: オリンパス上部消化管内視鏡

 

外科療法

遠位の胃癌(幽門部の胃癌)では肝門と膵頭部のリンパ節とともに胃の部分切除を行う。

近位の胃癌(胃底部及び胃体部の胃癌)では胃の全摘出を行う。更に、死亡率および罹患率を低下させるために膵体尾部切除及び脾臓切除も行う。

転移のために根治術が行えない場合でも、出血又は閉塞がある場合は胃の部分切除を行う。

胃の残存部に癌が再発した場合は、症状緩和のために胃の部分切除を行うことがある。胃癌の再発はほとんど原発癌で生じている。

 

併用療法

胃癌は薬剤で治療可能な癌の1つである。胃切除とリンパ節切除を行った患者にS-1抗癌剤を投与することにより3年生存率が70%から80%に向上する(注1)。

同様に、化学療法と放射線療法を併用すると胃摘出手術のみの治療と比較して平均生存期間が27から36ヶ月延びる(注2)。

パフォーマンス・ステータスの低い患者に対する単剤による化学療法の奏効率は20から30%である。これに対して、多剤化学療法では奏効率が35から50%に上昇する。

胃癌は放射線療法のみでは治療効果が現れない。放射線療法は主に、出血、閉塞、及び痛みの緩和療法として使用される。腫瘍の増殖抑制のための遺伝子療法や免疫チェックポイント阻害剤を使った免疫療法も近年実用化されている。

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治療に付随した管理

胃癌患者の治療には栄養(経空腸栄養又は非経口栄養)、嘔吐や下痢による代謝異常の改善、及び呼吸又は突発性細菌性腹膜炎による感染治療について注意が必要である。

ピロリ菌駆除により異時性の胃癌のリスクが約3分の2低減する。胃の閉塞を防止し症状を緩和するため内視鏡によるレーザ治療又はステント留置を行う。

 

予後

国立癌研究センターの統計によると胃癌の5年生存率はI期では97.3%、IV期では7.3%であり、全症例の平均では73.1%である(注3)。早期癌ではほとんど完治し、末期では絶望的であることを意味している。

胃癌の位置とリンパ節の状態により予後は異なる。遠位の胃癌でリンパ節に転移していなければ近位の胃癌と比較して予後は良好である。

更に、癌の浸潤が深くなったり、癌細胞のDNAの異数性があると予後は不良となる。形成性胃壁炎及び浸潤病変はポリープ性腫瘍と比較すると予後は非常に悪くなる。

日本における、胃癌が粘膜及び粘膜下組織に限局した早期胃癌では、胃摘出手術で5年生存率が50%を超えている。

胃癌が胃粘膜に限局しているときは、内視鏡による胃粘膜切除で胃癌の治療が可能である。

 

(注1)Sakuramoto S, et. al. “Adjuvant chemotherapy for gastric cancer with S-1, an oral fluoropyrimidine”, N Engl J Med.

(注2)Macdonald JS, et. al. “Chemoradiotherapy after surgery compared with surgery alone for adenocarcinoma of the stomach or gastroesophageal junction”, N Engl J Med.

(注3)国立癌研究センター、「胃癌の病期別生存率

 

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