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火災で煙を吸ってはいけない理由

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煙吸入と気道熱傷

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Credit: 糸魚川大火、新潟テレビ21

 

火災による多くの人が煙を吸入して、熱傷により気道や肺に障害が起き、死に至っている。

 

熱傷罹患部位

煙が上気道に入ると熱は急激失われるため、直接の熱傷の多くは声門上気道に限定される。

例外は、水蒸気の吸入である。水蒸気を吸入すると気道全体に熱傷を生じる。

 

煙が有害な理由

煙を吸入すると、気管全体に障害が現れる。煙吸入による障害は煙に含まれている多種の肺刺激物質(アルデヒド、酸、アンモニアなど)により生じる。これらの多くは呼吸器上皮細胞すなわち肺胞に有害である。

肺刺激物は重度の好中球性炎症を起こす。この炎症は熱傷後12から24時間後に現れ、粘膜浮腫、潰瘍、毛細血管からの漏出による肺毛細血管の異常な透水性増大、及び上皮、肺胞、及び免疫細胞の異常が起こる。

気管支痙攣や気管支漏が起こり、急性呼吸窮迫症候群に至る恐れがある。火災により酸素が消耗されているので、長時間低酸素呼吸により、他の障害を併発するか、低酸素症が現れることがある。

臨床症状

上気道の粘膜に熱傷を生じると喉頭浮腫により直ちに(または12から24時間後に)気道障害が起こる。

顔、口、及び首の熱傷は上気道を外部から損傷し、上気道をゆがめ、亜急性又は遅延して気道障害を起こす。

煙吸入傷害により気管支痙攣と気管支漏を生じ、咳、呼吸困難、喘鳴が現れ、急速に呼吸障害が起こることがある。

分泌物の堆積、粘膜繊毛クリアランス及び免疫機能不全、及び上皮壊疽により、傷害から3から5日後に肺感染が起こる。その後焼痂の形成及び胸郭運動の制約により肺に合併症が現れる。

 

診断

明らかな熱傷又は熱傷が疑われる患者では、直ちに気道の確保を確認しなければならない。頭部又は頸部の熱傷、呼吸困難、喘鳴、又は目視可能な紅斑又は浮腫様口内粘膜が認められるときは口腔咽頭及び声門上気道を喉頭鏡で検査する必要がある。低酸素症が進行すると急性呼吸窮迫症候群に到る場合がある。肺損傷又は重複感染への進行を防止するために継続的に胸部X線撮影を行う必要がある。

 

治療

気道閉塞の恐れがあるときは、気管挿管を直ちに行う必要がある。時間が経過すると、浮腫が広がり挿管が困難になる。気管挿管ができない患者には外科手術により気管瘻を形成しなければならない。

急性呼吸窮迫症候群のリスクがあるため、人工呼吸器の使用を考慮する必要がある。

患者には酸素吸入により低酸素症や一酸化炭素中毒の治療を行わなければならない。

気管支漏や痂皮の分泌物を除去するために肺洗浄が必要である。重複感染のリスクがあるため人工呼吸器による肺炎が疑われる場合は気管支鏡などを使用して感染に対する監視が必要である。

 

予後

熱傷から回復した患者には一般的に肺に長引く後遺症は現れない。気道に損傷がなければ、外科的に形成した気管瘻を除去することができる。

肺の機能は回復するが、気道に反応性気道機能不全症候群が現れることがある。