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国が推奨する精度が低い大腸癌検査 - 便潜血検査

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国が健康診断で推奨する本当の理由

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Photo: 便潜血検査キット

便潜血検査は大便に血液が混じっていないか(潜血)を調べる生理学検査である。

大便中の潜血があると大腸癌や大腸又は直腸にポリープがある可能性が高い。しかし癌やポリープからの出血でない場合もある。

検査で潜血が見つかった場合は、出血源を特定するための検査を行う必要がある。従って、便潜血検査では大便の中に血液の存在又は不存在しかわからず、出血源の情報は得られない。これに対して、下部消化管内視鏡検査では大腸癌の存在、ポリープの有無、更にはポリープ切除が行なえる。

 

便潜血検査の問題点

精度が高くない。癌やポリープから出血がなければ、癌があっても検査結果が陰性の場合がある(偽陰性)。

胃潰瘍や痔瘻がある場合や口腔や鼻からの出血を飲み込んだ場合、検査結果が陽性になる場合がある(偽陽性)。

便潜血検査が陽性の場合は他の検査が必要になる。便潜血検査の結果が陽性の場合は、下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡検査)を行う必要がある。これで異常がない場合は、再度の便潜血検査、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、下部消化管内視鏡検査、またはこれらの組み合わせた検査を行う必要がある。

便潜血検査では全ての癌を検査することができない。この検査では下部消化管内視鏡検査で調べられる癌が検出できない場合がある。

市町村で行われている健康診断で便潜血検査が採用されている理由

厚生労働省は市町村の行う大腸癌の検査で便潜血検査を採用する理由として「スクリーニング検査において全大腸内視鏡検査やS状結腸内視鏡検査を用

いることについては、死亡率減少効果を示す相応な証拠があるが(ガイドラ

イン p.16-22)、まれではあるものの腸管穿孔等の重篤な偶発症を伴うことか

ら、スクリーニング検査として実施することは勧められない(注1)」としている。しかし、合併症のリスクを強調して、便潜血検査における偽陽性、偽陰性のリスクが高いことには言及されていない。

国は医療費抑制のため、精度の低い便潜血検査を推奨しているが。ほとんどの医療機関は下部消化管内視鏡検査を推奨している。

便潜血検査は内視鏡と異なり、検査は非常に簡単でほとんど制約がない反面、精度が低く、陽性と判定されても大腸癌である可能性は高くなく、陰性と判定されても大腸癌でないとはいえない検査である。

患者にとっては陰性と判定されて、そのままにしておくと大腸癌が進行して、死に至ることもある。

早期癌の場合は治癒率が高く、進行癌の場合は5年生存率が非常に低くなるため、腸に異常がなくとも、人間ドックを定期的に受診して下部消化管内視鏡検査を受けるべきである。腸に異常がある場合は、専門の医療機関で同検査を受けなければならない。

 

(注1) 厚生労働省、「がん検診に関する検討会中間報告

参考資料: “fecal occult blood test”, Mayo Clinic

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