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富士登山で高山病にならないために

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標高の高い山を短時間で登ると高山病にかかるリスクが高くなる。

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Credit: 富士登山、夏の富士登山とご来光

 

2016年夏期の富士山の登山者数は24.8万人であった。そのうちの多くが弾丸登山を行った。

弾丸登山は、山小屋で宿泊するなど十分な休息をとらないまま夜通しで山頂をめざす登山者である。夏の富士登山者の3割が弾丸登山だと言われている。弾丸登山を行う理由としては、体力に自身があること、山小屋が混み合っていることなどが考えられるが。弾丸登山を行うと高山病にかかるリスクが非常に高くなる。

標高が高くなるにつれて、気圧は低下するが、大気中の酸素含有率は変わらない。酸素分圧は標高5800mでは海面レベルの約半分になる。

ほとんどの人は,1日に1500から2000mまで問題なく登山可能であるが,2000mになると、約20%が,3000mでは約40%が急性高山病を発症する。この疾患は登山の速度,到達点の標高、および睡眠時の標高が関係する。

富士山登山では急性高山病にかかるリスクが高いことに留意して十分な準備が必要である。

高山病とは

標高が2000メートルを超えて登山すると、酸素欠乏により中枢神経と肺に障害が起こる。この障害を高山病とよぶ。

 

高山病の分類

高山病は急性高山病、慢性高山病、高地脳浮腫、高地肺水腫、及び高地網膜出血の病態に分類される。

  • 急性高山病 - 標高2000メートル以上の登山。症状:頭痛、食欲不振、倦怠感。発病率:大。
  • 慢性高山病 - 標高2800メートル以上に滞在。症状:頭痛、疲労、呼吸困難、消化不良。発病率:5から18%。
  • 高地脳浮腫 - 標高4500メートル以上。症状:昏迷、運動失調、昏睡、死。発病率:小。 
  • 高地肺水腫 - 標高2800メートル以上。症状:呼吸困難、咳、頻脈。発病率:2から6%。
  • 高地網膜出血 - 標高4500メートル以上。症状:無症状又は可逆性視力変化。発病率:大。

 

高山病にかかる割合

急性高山病は最も多く発病する高山病である。2000メートルから3000メートルの登山では約20%が発病し、3000メートルから4200メートルでは約40%が発病し、4200メートル以上では約50%が発病すると言われている。

慢性高山病の発病率は5から18%だと考えられている。高所脳浮腫によるより深刻な神経障害は4500メートル以上の登山で約1から2%の発病率である。

2400メートルから4500メートルの登山では、健康な人でも約2から6%で高所肺水腫が起こる。注意すべきは、高所肺水腫に以前かかったことがあると発病率は60%に上昇する。特に急いで登山すると更に発病率を上昇する。

高所網膜出血の発病率は約33%である。この疾患は長期の視力障害には至らない。

高山病にかかるわけ

高山病の全ての病態の要因は顕著な酸素欠乏である。高所では気圧が低下するため、肺胞酸素分圧が低下する。

肺胞酸素分圧が60mmHgを下回ると、酸素は急速にヘモグロビンから分離し、酸素飽和の低下及び体の組織への酸素供給が減少する。

酸素欠乏は肺気腫、間質性肺疾患、心不全などの肺拡散能に障害がある人では影響が大きくなる。

脳では、低酸素症により脳血管が拡張し、脳浮腫が生じることがある。

低酸素症により肺動脈圧が上昇する。毛細血管の透過率が上昇して、肺水腫が起こるが可逆性障害である。

 

参考文献: Andrew M,“Altitude Diseases”, MSD Manual Professional Version