医学よもやま話

医学情報をご提供します。

溺水患者の病理から予後まで

advertisement

溺水による体内の変化と治療

****

f:id:tpspi:20170522142051g:plain

Photo:  遊泳禁止標識

 

溺水は水没により呼吸障害が起こり、酸素が欠乏し、肺や脳など複数の臓器が損傷する。治療としては呼吸停止、心臓停止、無酸素症、低換気、及び低体温症の改善である。

飲酒、4歳未満の幼児、及び男性は溺水のリスクが高い。

 

溺水の病理

人は水没すると無呼吸になり、ほとんどの場合で誤嚥が起こる。喉頭痙攣により肺に水が入る。

低酸素血症、炭酸過剰症、及び酸性血症が急激に進行する。水の誤嚥により気道閉塞、肺表面活性物質の活動低下、肺胞障害、及び気管支痙攣が生じる。

溺水から数時間又は数日後に肺の障害(急性呼吸窮迫症候群(ARDS))が生じ、非心原性肺水腫及び重度の低酸素血症が現れることがある。

溺水の主たる死因は重度の低酸素による心血管障害である。低酸素症により重度脳障害や急性腎不全が生じる。アルコールを摂取していると低酸素血症のリスクが高まる。

——

溺水の症状

溺水の症状は患者により異なる。溺水患者には一般的に低体温症状が現れる。低体温症は徐脈又は非収縮性又は心室細動による心拍停止のリスクが高くなる。

溺水患者が非低体温症でない場合は、頻呼吸、頻脈、微熱、チアノーゼが生じることもある。

 

治療

溺水患者救出後の治療は生命維持に重点がおかれ、必要に応じて、気道確保と心肺蘇生が行われる。

溺水患者が無呼吸の場合は、直ちに人工呼吸を行う。

肺から水を除去しない。肺から水を除去する試みは換気を遅らせ,嘔吐のリスクを増加させる。

心肺蘇生又は人工呼吸により、患者は嘔吐する。この時、患者の頭を横に向けて嘔吐物による窒息を防止する。

溺水患者は医療機関で呼吸障害の治療を受け、さらに24時間経過観察を行う。

気管支鏡で喘鳴や肺拡張不全の検査が必要な場合がある。

脳浮腫の程度が最小のうちは、神経障害の治療は支持療法で対処する。脳浮腫や頭蓋内圧を低減させるために、高張食塩水の静脈投与する。動脈血二酸化炭素分圧を34から36mmHgの低二酸化炭素症にすることも効果が期待できる。

溺水患者に震えや振動があると頭蓋内圧が上昇するため、これらの患者の体の動きは抑制する必要がある。

心拍停止の場合、低温療法により神経機能が温存される。現在の溺水患者の治療として救助後昏睡状態の場合は深部体温が34°C以上に上昇する復温は行わず、体温を32から34°Cに24から48時間維持する。

 

予後

生存状態で救急搬送された溺水患者の死亡率は25%である。約6%の患者で神経疾患が生じる。

溺水患者が長時間水没していた場合は、予後は悪くなる。幼児の場合、水没時間が60分未満で低体温症であると、神経障害無く回復している。

溺水患者が低血圧、持続性無呼吸、昏睡、基本生命維持治療の遅れが10分以上、及び心肺蘇生の時間が25分以上の場合も予後が悪くなる。

 

ユーチューブ動画: 人工呼吸とAEDの使い方