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医学よもやま話

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ケモブレイン - 化学療法性認知障害

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抗癌剤治療を受けている間、及びその後、記憶や認知機能に一時的に障害が現れる。

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乳癌の生存者には記憶やその他の認知障害が現れる。

抗癌剤の治療を受けた乳癌患者に認知障害の症状が現れることが1980年代に報告されていた。当時は乳癌治療後に生じる軽度の認知障害と捉えられていた。

この症状を医学的には化学療法後認知障害又はケモブレインという。

ケモブレインと言う言葉は1997年に論文で最初に使用された。

この認知障害は乳癌で使用された抗癌剤が原因とされている。

これまで化学療法性認知障害の原因と存在については意見の別れるところであったが、最近の研究から抗癌治療患者の一部で現れる薬剤の副作用であることが判明した。患者によっては認知障害は治療期間中であるが、他の患者では治療が終わっても長い期間認知障害が残っている。化学療法性認知障害は特に生殖器に関係する癌で化学療法を行った患者に多く見られる。乳癌、子宮癌、前立腺癌など。

 

有病率

化学療法性認知障害は一般に乳癌患者の10から40%で生じ、閉経前の女性及び高用量の抗癌剤で治療を受けた患者の有病率が高い。

 

症状

抗癌剤で最も影響を受ける体のシステムは視覚及び意味記憶、集中と運動調整である。抗癌剤によるこの副作用で患者は同時に複数の作業ができず、本を読んでも内容が理解できず、会話についていけず、言葉を思い出すことも困難になる。

臨床研究によれば、抗癌剤で治療の1年後、患者の脳は萎縮していたのに対して、この治療を受けなかった患者の脳は萎縮していなかったことが判明している。

化学療法性認知障害は一時的に生じるが、10年以上続く場合もある。

 

メカニズム

化学療法性認知障害の原因についての詳細は完全には解明されていないが、抗癌薬が脳に直接作用し、更にホルモンが神経系に影響を与えていると考えられている。

抗癌剤治療開始前に乳癌患者に認知障害があること、認知障害と閉経症状の類似、閉経前の女性における化学療法性認知障害の有病率の高さ、及びエストロゲン服用により症状が軽減することから認知機能におけるホルモン、特にエストロゲン、が化学療法性認知障害に大きく関わっている。

 

予後

抗癌剤で治療を受けた乳癌患者は治療後認知障害の影響を受けるが、症状は約4年で解消する。