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胃食道逆流疾患とは

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胃食道逆流疾患は1週間に1度以上胸焼けが生じる病態。

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イラスト:  横隔膜と下部食道括約筋の関係、東京慈恵会医科大学

 

胃食道逆流疾患は胃内容物が食道への逆流により、不快な症状や合併症が生じる。

 

疫学

胃食道逆流疾患は1週間に1度以上胸焼け(胃酸の逆流)がある病態であり、有病率は欧米人では10から20%、アジア人では5%未満。

胃食道逆流疾患発症のリスク要因は肥満と加齢。更に、この病態は家系が関係している。二卵性双生児より一卵性双生児に患者が多く見られることから、遺伝子が関係している。

 

病理学

胃内容物が食道に逆流すると、食道は胃酸により悪影響を受ける。そのため、食道には胃内容物から保護するためのメカニズムが備わっている。食道胃接合部の逆流防止バリアー、食道排出メカニズム、及び上皮防御因子。逆流防止バリアーは下部食道括約筋、下腿横隔膜、横隔膜食道靭帯などから構成されている。

息を吸い込んだり、腹圧が増大すると、下部食道括約筋の下腿横隔膜へ結合部に加わる圧力が増大する。正常な防御メカニズムに障害が起こると、胃内容物の逆流が増大。

胃内容物の逆流は健常人でも生じるが、通常は2つのステップで除去。大部分は蠕動運動で除去され、少量の残りの胃酸は唾液により中和。

健常者でも胃の膨張による迷走神経反射のため、飲み込むものがない状態で下部食道括約筋が弛緩すると、生理的に逆流が生じる。

胃食道逆流疾患の患者では、下部食道括約筋が一時的に弛緩し、特に腹腔内圧が増大したときに逆流が起こる。

裂孔ヘルニア - 裂孔ヘルニアでは下腿横隔膜と下部食道括約筋の隙間が広がるため、食道胃接合開口部が広がり、下部食道括約筋の圧力低下により、逆流の素因となる。この結果、下部食道括約筋の一時的な弛緩時に逆流が生じ、食道が胃酸にさらされる機会が増える。正常の食道排出メカニズムによりヘルニア嚢に胃内容物が留まる。次に飲み込みとき、下部食道括約筋が弛緩し、ヘルニア嚢の胃内容物が食道に逆流する。

 

肥満 - 肥満により胃の内圧が上昇し、食道胃圧勾配及び下部食道括約筋の一時的な弛緩の機会が増大する。このため、胃内容物が食道に逆流しやすくなる。更に、肥満により下腿横隔膜と下部食道括約筋の隙間が大きくなるため、裂孔ヘルニアの素因となる。

 

食道防御メカニズムは蠕動運動と唾液により維持されている。食道炎が悪化すると蠕動機能不全におちいり、食道収縮圧が30mmHg未満の場合は、蠕動排出の効果が低下する。唾液の産生は喫煙やシェーグレン症候群などの様々なメカニズムにより影響を受ける。

食道粘膜は多段の防御を行う。1段目の前上皮バリアーは唾液や粘膜下腺の重炭酸塩と結合した液体層から構成されており、2段目の上皮防御は細胞膜と強固な細胞間接合、細胞及び細胞間のバッファー、及び細胞膜のイオン・トランスポータから構成されている。3段目の上皮下の防御は食道への血液供給により行われる。

逆流胃内容物中の酸及び酸化ペプシンは細胞の結合を破壊し、細胞間の透水性を増加させ、細胞間隔を広げる重要な要因である。

一定量の逆流した胃内容物が細胞間に拡散すると細胞が損傷する。損傷のある上皮が逆流内容物の胃酸、ペプシン、又は他の有害な胃内容物にさらされると、胃食道逆流疾患の徴候と症状が生じる。逆流した胃内容物の胃酸、ペプシン又は胆汁は食道に直接的に有害であるだけでなく、逆流した胃液は食道の上皮細胞を刺激して、ケモカインを分泌する。ケモカインは食道に炎症細胞を集めるため、食道粘膜が損傷する。