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昏睡が起こるわけ

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昏睡は脳の組織の損傷又は脳の広範なニューロンに対する代謝作用又は中毒により起こる。

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昏睡、昏迷、睡眠の違い

昏睡は患者が自覚も覚醒もしない目を閉じて刺激に反応しない病的状態である。

 

昏睡は1つの病的状態ではなく、刺激に対する反射応答の程度により異なるレベルがある。意識障害は最も軽い嗜眠から最も重い昏睡に分類される。

 

昏迷は昏睡と同様な病態であるが、刺激を与えることにより患者は部分的な反応をするが、刺激を止めれば、患者はまた無反応状態に戻る。これに対して、睡眠は周期的な無意識状態で、この状態から正常な意識状態に戻ることができる。

昏睡になるわけ

人の覚醒状態は脳橋と中脳(網様体)の中央被蓋内のニューロンのネットワークにより維持されている。外傷、虚血、無酸素症、浮腫、又は代謝・毒性傷害によりニューロンのネットワークが損傷すると上行覚醒メカニズムが作用しなくなるため昏睡状態におちいる。

 

意識を作り出すためには、覚醒状態と、視床と皮質領域間の多数の並列に繋がったニューロン回路の正常な機能が必要である。

 

病的状態になると、視床や皮質のニューロンは代謝が大きいため、大きく損傷する。

 

心臓発作による全身酸素欠乏症や虚血などにより脳全体に障害が起きると、意識を作り出す皮質及び視床のニューロンの一部が損傷するが、網様体の覚醒ネットワークのニューロンは代謝が少ないため、損傷を免れる。この結果、患者は覚醒しているが、意識のない植物状態になる。

 

昏睡は脳の外傷、浮腫、炎症、虚血、又は腫瘍による組織の損傷又は脳の広範なニューロンに対する代謝作用又は中毒により起こる。

 

組織の損傷は脳幹及び前脳基底部の覚醒系のニューロンのネットワークに影響を与える。代謝性又は中毒性脳症は代謝が大きい皮質及び視床のニューロンを損傷する。

 

昏睡の原因となる組織の損傷は脳ヘルニアと中脳と内側側頭葉の虚血を引き起こし、脳神経、呼吸、及び運動神経が機能しなくなる。

 

上行覚醒系は橋中脳出血又は梗塞などの脳幹障害により直接的又は脳腫瘍、小脳テントの癌、膿瘍、出血、又は梗塞により間接的に損傷する。

 

代謝性脳症ではニューロンの正常な活動に必要な代謝環境が損なわれ、ニューロンが正常に機能しなくなる。髄膜炎、発作、臓器不全などでは、血流、酸素供給、グルコース濃度、温度、電解質濃度、及び頭蓋内圧が変動し、ニューロンの代謝環境が悪化する。

 

意識レベルは代謝異常のレベルにより異なる。軽度の代謝性脳症では嗜眠が生じ、重度の代謝性脳症では重度の昏睡が起こる。

 

血中のナトリウム濃度が急激に低下すると、昏睡及び発作が起こるが、徐々に低下した場合はこれらの病態は生じない。

 

中毒性脳症は抗うつ薬などの外因又は腎不全又は肝不全などの内因により生じる。細菌による急性髄膜炎では炎症と血管の変化により昏睡が起こる。