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医学よもやま話

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外傷性脳損傷及び脊髄損傷

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軽度な外傷が時間を経て重度機能障害に至ることがある

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疫学

外傷性脳損傷及び脊髄損傷は予防可能な疾患である。外傷性脳損傷は外傷による死亡又は障害者にいたる主要な原因になっている。

 

我が国の頭部外傷数は年間およそ28万人と推定されており、死亡総数の4%を占める。

 

外傷性脳損傷の大部分は転落、バイクの事故、及び暴行によるものである。

 

日本の脊髄損傷患者数は毎年5000人に上っている。主な原因は交通事故、転落、スポーツ、及び作業事故である。外傷性脳損傷や脊髄損傷のほとんどは若い男性である。

過去25年で、外傷性脳損傷や脊髄損傷での死亡者数の低下はICUにおける治療の高度化、脳や脊髄の早期な外科的処置、及び深部静脈血栓症や床ずれなどの対策によるところが大きい。

 

外傷性脳損傷や脊髄損傷を被った患者は完全なリハビリが必要である。患者の殆どは若者であるため、20から30年の長期のケアが必要となる。

 

軽度な外傷も重度な障害に至ることがある。軽度から中度の外傷性脳損傷と診断された約75%の患者は事故後数ヶ月間症状が残り、多くの患者が元の仕事に復帰できていない。

 

病理

中枢神経系の損傷には2つの段階がある。最初の神経障害は直接外傷によるものである。2番目の段階は神経病理プロセスによるもので、事故後数日から数週間継続する。

 

一次損傷段階

一次損傷段階は外傷後即座に起こり、即死の場合もある。医療が行われると、一次損傷段階は終了する。頭や脊髄の狭い密封空間での傷害では、神経組織が頭蓋骨や脊椎する直接の衝撃により損傷を被る。

 

神経組織は頭蓋骨や脊椎の液体で満ちた区画に収まっているので、体の動きが突然停止すると神経組織は遅れて停止する。神経組織は骨に対して前後に衝突し、直接損傷や対側損傷を被る。

体の動きに回転成分がある場合は、神経組織は回転、ねじれ、及び変形により、びまん性軸索損傷を被る。バイクの事故では突然の減速のため大きな損傷になる。貫通病変の場合は、弾丸などの発射物が脳や脊髄を通るとき、神経、血管、及び支持組織を切断する。

 

発射物が体内を高速で進むと、進路に真空の部位が作られ組織に空洞ができる。この空間は発射物より数倍大きくなり、周囲の組織が一時的に膨張して不可逆的な損傷を被る。

二次損傷段階

二次損傷段階は一次損傷段階の直後に始まり、ニューロンと神経膠が影響を受ける。

 

神経損傷の大部分は二次損傷によるものである。低酸素症、虚血、及び炎症のようなプロセス及び遊離基、興奮性アミノ酸、及びある種のイオン(例えばカルシウム)の効果により「ニューロンの自殺」が起こる。

 

脳が損傷を被ると、低酸素虚血状態になりやすい。最も影響を受けるのが海馬と前頭葉の「分水嶺」領域である。神経障害の遅れが虚血の遅れに影響する。

 

びまん性の微小血管損傷は大脳血管の自己調節の早期の喪失および脳血液関門の機能の喪失による。この結果、腔内微絨毛の形成のような血管内皮が変化し、大脳浮腫が生じる。

 

びまん性軸索損傷は大脳白質内の軸索を変形させ、非局所性脳症のような神経障害を引き起こす。この種の傷害が最初の外傷から最大12時間遅れて現れる。