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医学よもやま話

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産科医は今後、新生児のへその緒を切リ急がなくなる

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鉄欠乏症の防止と免疫機能の向上

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これまで産科医は新生児のへその緒を生後直ちに切断していた。

近年、この常識が変化してきている。新生児の両親はへその緒が直ちに切断されないことに驚いてはいけない。

 

米国産婦人科医学会の勧告

米国産婦人科医学会は今年1月、産科医は新生児のへその緒をクランプして切断するまでに時間をあけるように公式に勧告した。新生児が母親から生まれるとき、母体と赤ん坊を繋いでいるへその緒の切断を少なくとも30から60秒待つことにより、多くの血液が新生児に送られ、赤ん坊の脳の発達に必要な鉄分を供給可能。

切断するまでの間、赤ん坊を乾かし、温かいタオルで覆い、母親の腹か胸の上で休ませる。帝王切開で生まれた場合は、この間、産科医又は看護師が赤ん坊を抱きかかえておく。

他の医学団体の勧告

他の医学団体もへその緒のクランプを遅らせることを推奨している。米国小児科学会はへその緒を切断するまでに少なくとも30から60秒待つことを、WHOは少なくとも60秒待つことを、米国助産師学会は2から5分待つことをそれぞれ勧告している。

 

産科医のこれまでの常識

20世紀半ばまでは、へその緒を切断するまでに数分間待つのが常識であった。その後、へその緒をただちにに切断することにより母親の大量出血のリスクを防げるとする誤った考え方が広まってしまった。

当時、第一線の産科医は赤ん坊を素早く取り上げ、へその緒を素早すクランプすることが正しい処置であると確信していた。

 

最新の研究成果

近年の研究によりへその緒を直ちに切断する従来の処置方法に異論が出た。2011年にスイスで行われた研究では、へその緒の切断を3分間遅らせた満期児が生後4ヶ月における鉄欠乏症患者は0.6%に過ぎないのに対して、直ちにクランプした満期児では5.7%であった。

4才までに、へその緒のクランプを遅らせた子どもたちは運動と社会性において高い能力を示しており、鉄欠乏症の子どもたちと比較して顕著な差が現れている。2013年に行われた研究ではへその緒の切断に時間を開けた場合は、赤ん坊の鉄分が上昇することが判明した。

鉄欠乏症の罹患率は開発途上国では高くなっている。これまでの誤った新生児に対する処置により、米国では幼児用の鉄欠乏症が8から14%に達している。

 

新たな処置による効果

米国予防医療専門委員会の2015年の報告書では鉄欠乏症の予防は治療より望ましいとしている。

へその緒の切断を遅らせることにより子供が鉄欠乏症にかかる可能性を減らす以上の効果が期待されている。臍帯血には鉄の他、免疫グロブリンや幹細胞を含んでおり、へその緒のクランプを遅らせることにより免疫機能や治癒力向上の可能性がある。

早産の赤ん坊では、へその緒のクランプを遅らせることにより脳内出血や壊死性腸炎のような入内な腸感染に罹患率を低下させることができる。これらの疾患は早産でよく起こる合併症である。

 

参考資料:” Doctors No Longer Rush to Cut the Umbilical Cord” by Alice Callahan, New York Times 2017-3-2