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人はなぜ睡眠が必要なのか?

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眠ると嫌なことが忘れられるから

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 過去数年間、人間にはなぜ睡眠が必要なのかについて多くの研究が行われてきた。

 

睡眠についての様々な学説

ある研究者はエネルギーを蓄えるためだと言い、他の研究者は脳内の老廃物を除去するためだと言う。更に他の研究者は睡眠は単に静かに横になり、天敵から身を隠すだけのものだと言っている。

 

記憶の仕組み

人は学習すると、脳内のニューロン間にシナプスが伸びる。ニューロンはシナプスにより他のニューロンに信号を素早く効果的に送る。この結果、新たな記憶が脳に定着する。

 

新たな仮説

今年1月27日に睡眠について2つの研究成果が米国科学雑誌「Science」に掲載された。共に、「睡眠はその日に学習したことの一部を忘れるためにある」とするものである。

 

1つ目の研究

1つ目の研究は、ウィスコンシン・マジソン大学の生物学者であるトノーニ博士ら研究チームによるものである。

研究チームは2003年に人の脳のシナプスは日中は元気よく成長し、眠りにつくとシナプスは収縮することを発表している。それ以来、研究チームはいわゆるシナプスの恒常性仮説を裏付ける間接的な証拠を数多く発見している。

他の仮説を裏付ける証拠は脳から出ている電気波形を調べることにより判明した。深い眠りに陥ると、波形が弱くなる。シナプスが収縮するためこの変化が起こると研究チームは考えている。

実験から、眠っているマウスの脳のシナプスは起きているときより18%小さいことが判明した。

 

2つ目の研究

2つ目の研究はジョーンズ・ホプキンス大学の研究者のグラハムHディエリング氏率いるチームによるもので、マウスの脳内のタンパク質を調べてシナプスの恒常性仮説の実証実験に関する。

この実験では、マウスの脳のシナプスの表面を発光させる薬剤を投与。この結果、研究チームはマウスが眠っていると表面タンパク質の数が減少することを発見。この減少こそがシナプスが収縮していることを示すものである。

研究チームは次にこの変化を起こす分子トリガーを追跡。その結果、夜になるとシナプス内で数百個のタンパク質が増加又は減少することが判明。その中で、ホーマー1A と呼ばれるタンパク質の変化が顕著であることを突き止めた。

ニューロンの実験室での研究において、ホーマー1A はシナプスを収縮させるために重要であることがすでに分かっている。研究チームはこのタンパク質が睡眠において重要と推測。眠くなるとニューロンがホーマー1A を作り出し、これをシナプスに送り出す。眠リにつくと、ホーマー1A が収縮メカニズムを起動させることを解明した。

 

研究成果

シナプスの収縮はすべてのニューロンで起こるわけではなく、シナプスの5分の1は変化しない。

将来、シナプスをエンコードすることにより、変えたくない記憶を定着させたり、悪い記憶をうまく消し去ることが可能になるかもしれない。

 

参考資料:” Ultrastructural evidence for synaptic scaling across the wake/sleep cycle”, Science 2017-2-3