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医学よもやま話

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ある婦人の深刻な症状 ― 高血圧患者の急激な血圧降下

医薬 老人医療

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加齢は薬剤に対するリスクを高める

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いつも元気いっぱいな婦人が急に元気が無くなってしまった。顔色が悪く疲れているように見える。目はどんよりとして、弱々しく笑うのがやっとであった。

この婦人は、知り合いに進められて、クリニックに行ってみた。クリニックの医師は彼女の様子を見た後、血圧を測った。助手に救急車の手配を命じた。

 

驚きの血圧値

婦人はその後のことを覚えていない。彼女はストレッチャーに載せられ救急病院に搬送された。このとき、婦人の血圧は非常に低かった。彼女はいつも高血圧薬を服用していたので、耳を疑った。

彼女は救急病院で、採血、点滴、心電図の検査を受けた。血液検査の結果から心臓に異常があることがわかった。彼女は心臓発作を起こしていた。

彼女は高血圧、喘息、腰痛があったがいずれも軽度であった。これまで心臓には異常がなかった。

数日間検査が続いた。血液検査の結果は心疾患以外は正常であった。心電図の結果も正常であった。最後に、心臓発作の原因である心筋梗塞を調べるために心臓カテーテル検査を行った。検査の後、医師は婦人の血管年齢は35歳であると言った。

立っていることが出来ない

入院時、廊下を歩いていると突然、意識が朦朧とした。看護師がただちに婦人の血圧を測ったところ、非常に低かった。数分後に測り直すと、血圧は正常値に戻っていた。意識が朦朧とした原因は脳に十分な血液が送られなかったからであった。血圧が低すぎて、血液を体の各部位に送ることができなかった。医師はこの原因を突き止めることにした。

医師は婦人が服用している高血圧薬を疑った。ドキサゾシンを服用すると血圧が急激に降下することがある。急に立ち上がったときなどに良く見られる。これを起立性低血圧と呼ぶ。彼女は歩き回ると意識が朦朧とすることがあった。脳と同様に、心臓も血液と酸素の供給が不十分になった。医師は高血圧薬の服用を中止させた。

 

原因の究明

夏中、婦人の血圧は変動し続けた。主治医は心配になり、彼女に高血圧の専門医を紹介した。

婦人は高血圧薬、アレルギー薬、腰痛薬、喘息用の吸入薬を服用していることを医師に伝えた。動作検査の結果は正常であった。その日の彼女の血圧は正常であった。医師は彼女の数年分の医療記録を調べた結果、彼女に貧血があり、血中のナトリウムが低下していることがわかった。

医師は血圧の低下は高血圧薬以外の薬剤であり、体から水分を奪うことにより血圧を降下させる薬剤であると考えた。この薬剤は脱水症状を引き起こし、血圧を降下させ、ナトリウム値も低下させるものである。医師は彼女に薬剤の服用を中止させた。

安全のために、医師は彼女に数種類の検査を受けさせた。貧血の原因の検査と、副腎の検査であった。副腎の異常は稀であるが、異常があるとナトリウム地が低下し、低血圧になることがある。副腎の異常の可能性は低いが、医師は副腎の機能を調べることにした。

 

ホルモンの問題

数日後、結果が出た。彼女は鉄欠乏性貧血であった。これは予想できた。しかし、他の検査結果は医師を驚愕させた。彼女から副腎で作られるコーチゾルが検出されなかったのである。彼女の副腎は機能していなかった。これはアジソン病と呼ばれる、まれな病気で感染又は免疫疾患によるもので、ケネディ大統領がかかっていた病気である。しかし、副腎不全は多くの場合、副腎が分泌するホルモンに似た薬剤の服用により引き起こされる。プレドニゾンのようなステロイド剤である。これは副腎ホルモンであるコーチゾルの合成薬である。

経口ステロイド薬は副腎の機能を停止させるが、ステロイド吸引薬は肺にのみ作用し、他の臓器には影響を及ぼさないことがわかっている。近年の研究からこの薬剤が副腎に作用する可能性があることが分かってきた。医師はこの婦人がまさに該当者であると考えた。

予期しない結末

ステロイド吸引薬は1960年代に開発されてから多くの人命を救ってきた。現在も喘息の最も効果的な治療薬として使われ続けている。この婦人は喘息の程度やステロイド剤が必要かどうかを調べるための肺機能検査が行われていなかった。医師はこの婦人がステロイド吸引薬に依存していることを心配した。彼女の体は副腎からストレス・ホルモンを分泌するようなストレスがかかったときだけ症状が現れる可能性があった。

内分泌の専門医は婦人が副腎で作り出すことが出来ないホルモンの代替となる薬剤を処方した。彼女の副腎の機能が回復したら合成ホルモン薬を投与を中止することにした。婦人は会機能検査を受けた結果、良好に機能していることが分かり、吸入式ステロイド剤の服用を中止した。

薬剤は病気を治療するものであり、病気の原因となるものであるとは考えられていない。しかし、入院患者の6%は薬剤の副作用によるものである。薬剤の効果や薬害は、年齢に応じて変化する。65歳以上の入院患者の12%が薬剤が原因で入院を余儀なくされている。加齢により体外に薬剤を排出する機能が低下するため、薬剤のリスクは高齢者には高くなる。

 

参考資料:" Why Did Her High Blood Pressure Turn Dangerously Low? ", New York Times 2017-1-16