医学よもやま話

医学情報をご提供します。

スーパー老人

advertisement

厳しい鍛錬をすれば脳の老化は防げる

 ****

歳を取ると脳は老化する

65歳を過ぎると、普通の人は脳の衰えに悩まされる。物忘れがひどくなったり、集中できる時間が短くなってしまう。しかし、世の中には、頭脳明晰な老人がいる。

 

ほとんどの老人は脳の働きが衰えているのに対して、一部の老人は頭脳が明晰である。この頭脳明晰な老人をスーパー老人と呼ぶ。彼らの記憶力や注意力は健康な25歳の若者と同程度である。米国マサチューセッツのジェネラル・ホスピタルでスーパー老人の脳の状態について研究が行われた。

 

研究ではスーパー老人と普通の老人の脳を比較するためにfMRIが使用された。2つのグループで変化が生じている脳の領域を特定することに成功した。

 

認知を司る脳の領域としては前頭前皮質が考えがちであるが、変化は感情を司る領域である中央帯状皮質や前島に起こっていた。

 

脳の認知領域と感情領域が異なることはすでに知られている。

 

人間の脳には3つの層があり、最内層は爬虫類から受け継いでおり、基本的な生存のための回路を備えている。中間層は大脳辺縁系であり哺乳類から受け継いだ感情回路を含んでいる。最外層は人間特有の合理的な思考を保存すると言われている。

 

人間の脳は堆積岩のようには作られてはいない。認知を司る層が時間をかけて徐々に蓄積する構造にはなっていない。脳は会社の成長のように進化する。会社は発展するにつれて組織を改変している。大脳辺縁系などの感情を司る領域は脳全体での通信を行う主要なハブとして機能している。これらの領域は感情の他、言語、ストレス、内臓の調節、及び人間の五感を経験として調整するために重要である。

 

これらの主要なハブ領域がスーパ老人で重要な役割を果たしていることが判明した。

問題は、どのようにスーパー老人になるかである。どのような活動を行ったら高齢になっても頭脳を明晰に保てるかである。何かに打ち込むことがスーパー老人になるために重要であることが判明している。肉体や精神のいずれにおいても、難しい作業をこなすことにより、この脳の重要な領域が増大することがわかっている。

 

しかし、スーパー老人への道のりは容易ではない。この脳の領域にはある特性があるからである。この領域の活動が増えると、不快な感じを覚えることになる。疲れを感じたり、フラストレーションが溜まったりする。数学の難問を解いたり、体を限界まで酷使すると、人間は苦痛を感じる。アメリカ海兵隊には「痛みは体から出る弱さである」のモットーがある。努力をして苦痛を感じるのは、筋肉と精神力を鍛えていることの現れである。スーパー老人は海兵隊隊員と同じで、厳しい鍛錬における不快に耐えることが出来る。努力することにより若者のような記憶力と集中力を維持することが出来る。

 

数独のようなパズルを繰り返してもスーパー老人にはなれない。反吐が出るほどの努力をする必要がある。

 

人は歳を取ると不快な状況を避けて、幸福を追い求める。これは一見正しい選択のようであるが、精神修養や身体鍛錬の苦痛を避けることは脳に有害である。脳を使わないことにより重要や領域の組織が薄くなってしまう。脳を使わなければ、脳の機能は失われる。

 

外国語の習得や、難しい試験に挑戦したり、楽器をマスターすることにより、スーパー老人になるために、脳を訓練することが出来る。

 

参考文献: "How to Become a ‘Superager’", New York Times 2017-1-2