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医学よもやま話

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双極性障害

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うつ病より深刻で、自殺願望が強い精神疾患

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双極性障害は以前躁うつ病と呼ばれており、感情が高ぶったり(躁状態)、落ち込んだり(うつ状態)感情が極端に変化する疾病です。うつ状態になると、悲しい気分になり、希望を失い、あらゆる活動の関心や喜びを失います。それに対して、躁状態になると幸福感を感じ、エネルギーに満ち溢れます。気分の変化は1年に数回であったり、1週間に数回起こったりします。

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credit:  Rodin Le Penseur

 

双極性障害は破壊的で長期に渡る病態ですが、治療計画に従って気分をコントロールすることができます。

 

症状

双極性障害や関係する疾病には数種類があります。各種の疾病では、双極性障害の正確な症状は個人差があります。双極性障害には1型と2型があります。

 

双極性障害の判定基準

アメリカ精神医学会の精神疾患診断統計マニュアルでは双極性障害や関連疾病の診断基準を規定しています。

 

双極性障害や関連疾病の診断基準は疾病の種類に応じて異なります。

  • 双極性障害1型。少なくとも1回躁を発症する。躁の発症に前後して軽躁または通常のうつを発症する場合がある。躁の発症は生活を大きく損ね、入院を必要とする。精神病を引き起こすこともある。
  • 双極性障害Ⅱ型。少なくとも1回うつを発症し2週間以上続く。少なことも1回軽躁を発症し4日以上続くが、躁は発症しない。通常のうつ又は気分が突然変化し、行動するのが苦痛になる。生活が困難になる。
  • その他。他の疾病が原因の双極性障害や関連疾病、例えばクッシング病、多発性硬化症、又は脳卒中。これらを物質及び医薬性双極性障害や関連疾病と呼ぶ。

 

双極性障害Ⅰ型における躁は症状が重く危険であり、双極性障害Ⅱ型の患者は長期間うつ状態であり、生活に多大な影響が出ます。

 

専門医の診察が必要な場合

うつ又は躁の症状があるときは、専門医の診察を受ける必要があります。双極性障害は自然に治癒することはありませんが、治療により症状を抑えることができます。

 

多くの双極性障害患者は治療を受けていません。気分が優れなく、不安定な感情が患者自身と家族の生活を損ねている事を理解していません。

 

双極性障害の患者は幸福感にひたり、活動的な期間を過ごすこともできますが、幸福な期間の後には憂鬱な期間が続き、金銭、法律、又は人間関係で問題が起こります。

 

治療を受けることに抵抗がある場合は、家族や友人など信頼できる人に相談すれば、治療への一歩が踏み出せます。

 

緊急のサポートが必要なとき

双極性障害患者には自殺願望や行動がみられます。

自殺の防ぎ方には次の方法があります。

  • 親友や家族に相談する。
  • 自殺ホットラインに電話で相談する。
  • 医師に相談する。

 

家族や友人が双極性障害があり、自殺の恐れがあるときは、誰か人を付き添わせます。

 

双極性障害の原因

双極性障害の原因は解明されていませんが、次の要因が関係していると考えられています。

  •  脳の変化。双極性障害患者の脳に変化が生じている。
  • 神経伝達物質。神経伝達物質が双極性障害や関連疾病に大きく関係している。
  • 遺伝。双極性障害は兄弟や両親の1親等で見られる。

 

危険因子

双極性障害の発症や初期症状を誘発する要因として次のものがあります。

  • 双極性障害患者の一親等の人。親や兄弟。
  • 強いストレス。
  • 薬剤又はアルコール中毒。
  • 近親者の死別又は他の心の深い傷などの生活の大きな変化。

 

双極性障害と共に発症する精神疾患

双極性障害患者は、この病気の診断前後に他の精神疾患にかかっている場合があります。次の精神疾患は双極性障害を悪化させたり、治癒を妨げる恐れがあります。

  • 不安障害。状況や理由が限定されない過剰な不安や心配が長期間持続し, 日常生活に支障をきたす精神疾患で、心や体の変調をもたらす。社会不安障害や全般性不安障害をふくむ。全般性不安障害は特定の原因のない不安・恐怖が持続する症状である。
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)。PTSD患者は双極性障害を発症する場合がある。
  • 注意欠陥多動性障害(ADHD)。ADHD患者は双極性障害と重複する症状がある。双極性障害はADHDとの区別が困難。両方の疾病にかかっている場合がある。
  • 依存症または物質誤用。双極性障害患者の多くはアルコール、タバコ、または薬物依存症でもある。薬物やアルコールは症状を和らげず、うつ状態や躁状態を発症、長引かせ、又は悪化させる。
  • 身体の健康の問題。双極性障害と診断された患者は心臓病、甲状腺機能障害、又は肥満などの疾病がある場合が多い。

 

双極性障害が引き起こす重大な問題

双極性障害を治療をせずに放置しておくと、双極性障害は生活のあらゆる面に次のような重大な問題を引き起こします。

  • 薬剤やアルコールの問題。
  • 自殺又は自殺未遂。
  • 犯罪。
  • 家計の問題。
  • 対人関係。
  • 隔離及び孤独。
  • 仕事や学業の成績不振。
  • 職場や学校の頻繁な欠勤や欠席。

 

検査と診断

双極性障害が疑われるときは、多種の検査が行われます。検査により他の疾患の可能性を排除し、正確な診断を行い、他の関係する合併症を調べます。双極性障害の診断では次の検査が行われます。

  • 理学的検査。理学検査により症状を引き起こしている医学上の問題を調べる。
  • 心理評価。患者の考え方、感覚、及び行動パターンの問診を行う。患者に自己評価試験の質問に回答させる。可能な場合は、患者の症状や躁状態やうつ状態の発症期間について家族や親友に問診が行われる。
  • 気分の状態の記録。患者に何が起こっているかを正確に調べるために、患者の毎日の気分の状態、睡眠、及び正しい診断と治療を行うための要因の記録を付けさせる。
  • 徴候と症状。医師は患者の症状と双極性障害や関連疾病の基準を比較して、診断を下す。

 

治療

治療は専門医により行われます。場合により、専門医の他、心理療法士、ソーシャルワーカー、及び治療は精神医学看護士のチームが治療に当たる場合もあります。

 

治療は次の様に行われます。

  • 初期治療。患者の気分を直ちに改善するための薬剤の服用を開始する。症状が改善したら、最適な長期の治療計画を立てる。
  • 継続治療。気分が良くなっても、双極性障害は長期間の治療が必要。長期に双極性障害を治療するために維持療法が行われる。維持療法を中断すると、症状が再発したり、気分の変化が躁状態やうつ状態を引き起こす。
  • 毎日の治療計画の立案。患者の症状が収まっている時に必要な支援と助言を行う。
  • 薬物乱用の治療。アルコール又は薬物中毒患者は薬物乱用治療を受ける必要がある。
  • 入院。患者に危険な行動、自殺願望、精神疾患があるときは、患者を入院させる。患者が躁状態又は通常のうつ状態であれば、病院での治療により、患者は安全で気分も安定する。

 

双極性障害の治療には薬物療法と心理療法があります。

 

薬物療法

双極性障害で使用される薬物には多くの種類があります。処方される薬剤の種類や用量は患者の症状により決められます。

 

薬剤にには次の種類があります。

  • 気分安定薬。双極性障害Ⅰ型又はⅡ型にかかわらず、躁状態又はうつ状態の発症を抑制するために気分安定薬が必要。
  • 抗精神病薬。他の薬剤を使った治療で、うつ症状や躁症状が続くならば、抗精神病薬を追加すると効果が期待できる。抗精神病薬のみ又は気分安定薬とともに処方される場合がある。
  • 抗うつ薬。うつ状態を治療するために抗うつ薬を加える場合もある。抗うつ薬は躁状態を引き起こすことがあるので、通常は気分安定薬又は抗精神病薬と共に処方される。
  • 抗不安薬。抗不安薬は不安を軽減し、睡眠を改善する。抗不安薬は短期間の不安軽減に有効である。

 

副作用

患者が副作用に耐えられず、自己の判断で服用を中止したり用量を減らすと、禁断症状が現れるか、症状が再発する場合があります。

 

症状にあった薬剤を適切な用量を服用し、体が薬剤に適応すると、副作用の症状は治まります。

 

症状に合った薬剤を見つける

患者に合った薬剤は試行錯誤で見つけることになります。薬剤が症状に効果がないときは、医師は他の薬剤を処方します。

 

薬剤によっては効果が出るまでに数週間から数ヶ月かかるものもあります。最小の副作用で症状を抑える薬剤を調べるために、薬剤を一種類ずつ他の薬剤と入れ替えます。

 

心理療法

心理療法は双極性障害の主要な治療方法で、個人、家族、又はグループで行われます。心理療法には次のものがあります。

  • 認知行動療法。認知行動療法は不健全で否定的な信念や行動を見つけ出し健康で肯定的なものに置き換える療法。
  • 心理教育。患者が双極性障害について学ぶことを支援し、患者自身及び家族の双極性障害についての理解を助ける。
  • 対人関係及び社会リズム療法(IPSRT)。IPSRTは睡眠、起床、及び食事などの日課を安定させる。日課とすることにより気分を安定させる。双極性

 

ライフスタイルと家庭療法

双極性障害の症状を悪化させる習慣を止めるためにライフスタイルを変える必要があります。

  • 禁酒。禁酒が困難な場合は専門家に相談する。
  • 不健康な関係を避ける。不健康な行いや態度をとる人に近づかない。
  • 定期的に身体活動や運動を行う。適度で規則的な身体活動や運動は患者の気分を安定させるのに役立つ。体を動かすことにより、患者の気分を良くする脳内化学物質(エンドロフィン)が分泌し、正しい睡眠や多くの利点が得られる。運動をするときは医師に相談する。
  • 十分な睡眠をとる。夜更かしをしない。十分な睡眠は気分を改善するために重要である。眠れないときは、医師に相談する。

 

対処と支援

双極性障害には次の方法で対処します。

  • 双極性障害について学ぶ。双極性障害の状態を学ぶことにより治療計画に積極的な参加が可能になる。患者の家族や友人は病状を理解しやすくなる。
  • 双極性障害の治癒には時間がかかるが、双極性障害からの治癒で損なわれた人間関係や他の問題を解決する目標を持つ。
  • 支援団体に参加する。双極性障害患者の患者は同様な困難に直面している他の患者と経験を共有する事ができる。
  • ストレス解消法を見つける。趣味、運動、及びレクレーション活動のような患者のストレス発散法を見つける。

 

予防

双極性障害を防止する確実な方法はありませんが、精神障害の徴候が現れた時に治療を行えば双極性障害または他の精神状態の悪化が防止できます。

 

患者が双極性障害と診断された場合は、軽い症状が躁やうつ発症の防止に役立ちます。

  • 悪化の兆候に注意する。早期に症状に注意すれば症状の悪化を防止できる。患者がうつ又は躁発症を感じたら医師の診察を受ける。徴候を観察するときは家族や友人に相談する。
  • 飲酒を控える。飲酒により症状が悪化し、治療前の状態に戻る。
  • 患者は処方薬を決められた用量を服用する。患者が途中で処方薬を止めるとうつになり、自殺の願望が現れたり、躁またはうつ状態になる。薬の種類をを変えたいときは、医師に相談する。
  • 他の薬剤を服用するときは、事前に医師に相談する必要がある。患者が他の医師から処方された薬剤又は市販のサプリメントや市販薬を服用するときは、事前に双極性障害の治療を行っている医師に相談しなければならない。他の薬剤は双極性障害の症状を悪化または双極性障害治療薬に影響する場合がある。

 

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