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医学よもやま話

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オーガスⅡ対オーレップ

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網膜色素変性の最新治療法

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網膜色素変性は徐々に進行し、多様な遺伝変異により発症する網膜と網膜色素変性疾患です。症状として夜盲、視野狭窄、それに視力低下が起こります。

 

網膜には錐体細胞と桿体細胞の2種類の光受容細胞があり。錘体細胞は網膜の中心の黄斑部に存在して視力や色覚に関与します。感度が低いため暗い所では機能せず、所定の光量が必要です。これに対して桿体細胞は黄斑部の周囲に存在して周辺視野や明暗を認識します。感度が高いために暗い所で機能し、僅かな光量で反応します。

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Image:  Argus II  Credit: Second Sight

 

網膜色素変性では桿体細胞から障害が出るために暗い所が見えにくくなり(夜盲)、周辺視野が狭くなり、続いて錘体細胞も障害が出て視力低下が起こります。

 

日本では10万人につき18.7人の割合で発症しています。

 

現在、人工網膜の研究が進んでおり、アメリカではオーガスⅡ(ArgusⅡ)が実用化されています。2013年にアメリカ食品医薬品局FDAより製造承認を受けています。

 

オーガスⅡは、カメラで取り込んだ映像を画像処理して、その信号を顔面皮膚内に埋め込んだ受信部に送り、そこから電線を出して眼球内に挿入し、網膜近傍に埋め込んだ電極から電流を出力します。電流により網膜内の神経節細胞が刺激され視神経を通って後頭葉に伝わり視覚が生じます。オーガスⅡによって完全に失明した患者が光覚を回復することが可能となりました。

 

オーガスⅡは視力を失った視覚障害者にとっては形が認識出来るだけでも有り難いのですが、物が鮮明に見えず、また構造が複雑なため、高度な手術が必要です。

 

解像度が低く、視野が狭く、更に1000万円を超える高額な費用が必要です。

 

これに対して岡山大学では現在、色素結合薄膜型人工網膜であるオーレップ(OUReP)を開発しています。

 

Image: オーレップ Credit:  岡山大学

 

オーレップは、オーガスⅡのように電極から電流を出力するのではなく、光を受けて電位差を出力し、近傍の神経細胞を刺激します。

 

オーレップはポリエチレンフィルムから出来た大型の人工網膜であり、丸めて眼球の小さな切開創から網膜下へ埋め込むことができます。人工網膜表面の多数の色素分子が網膜の残存神経細胞を1つずつ刺激するので、高い分解能が得られます。

 

人工網膜の材料は安価で、術式も黄斑下手術が適応できるため、費用も抑えられます(片目約100万円)。保険適応になれば患者の負担は非常に低額となります。

 

アメリカの1/10の費用で、手術も容易で、構造も簡単、患者は高分解能の視力が回復でき、余計な器具を持ち運ぶ必要がありません。オーレップは2016年に臨床開始予定です。

 

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