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記憶の定着と睡眠との関係

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眠らなくとも記憶は定着できる?

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睡眠を取らなくとも大脳新皮質の再活性化させることにより記憶力が向上することが分かりました。

 

 

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レム睡眠とノンレム睡眠

 

睡眠には浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)があります。まずノンレム睡眠が現れ、約1時間以内に最も深いノンレム睡眠の段階に達し、やがて約1時間から2時間ほどで徐々に浅くなってレム睡眠になります。以後はノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れ、レム睡眠はほぼ1時間半おきに20から 30分続きます。一晩の平均的な 6から 8 時間の睡眠では 4から 5 回のレム睡眠が現れます。

 

記憶の定着

 

睡眠により知覚した経験は記憶として定着されます。この記憶は睡眠時に脳内で処理されます。これまで、脳のどの領域が記憶の定着に関与しているか不明でした。大脳新皮質内の高次の第二運動野(M2)は低次の第一体性感覚野(S1)とつながり、トップダウン回路を形成しています。理化学研究所の脳科学総合研究センターの村山正宜研究グループは、知覚記憶の定着には、M2からS1へと情報が伝わるトップダウン回路への入力が関与していることを突き止めました。

 

研究グループはマウスに知覚学習をさせ、その直後のノンレム睡眠時にトップダウン回路への入力を抑制すると、知覚記憶の定着が妨げられることを発見し、睡眠を利用した知覚学習には睡眠直後が重要であることが分かりました。また、知覚学習直後のノンレム睡眠時にM2とS1を同時に光で刺激すると、マウスは学習した知覚記憶を、より長く保持し、睡眠時の知覚回路を活性化すると記憶力が向上しました。

 

人や動物は長時間眠らないと、記憶の定着が阻害されます。しかし、知覚学習後のマウスを眠らさないで、M2とS1を同時に光で刺激すると、通常の睡眠をとったマウスと比べても、より長い期間、知覚記憶を保持しました。睡眠不足の状態でも、適切なタイミングで大脳新皮質を刺激することで、知覚記憶を向上できることが分かりました。

 

光刺激を行った感覚野を含む大脳新皮質は脳表面にあります。近年、経頭蓋の磁気刺激や経頭蓋直流刺激が臨床で行われています。マウスを使った大脳新皮質の刺激パターンが臨床に応用できれば、睡眠障害による記憶障害の治療が可能になると期待されています。

 

この研究は、米国の科学雑誌『Science』オンライン速報版(2016年5月26日付けに掲載されました。

 

眠らなくとも記憶は定着できます。

 

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