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免疫チェックポイント阻害剤 -- 癌治療薬の最前線

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日本発の画期的な薬が、アメリカとの共同開発で非常に高額な薬になってしまった!

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免疫反応時に、免疫システムは潜在的に有害な物質の攻撃をオンにします。更に、免疫システムは攻撃をオフにする手段も持っています。免疫システムはこれら機能により免疫反応を制御して健康な組織が損傷を受けることを防止します。

 

T細胞は免疫システムの細胞であり、癌細胞を死滅させます。T細胞は表面に受容体と呼ばれる特別な場所があり、他の細胞や分子がこれらの受容体に付着してT細胞の攻撃をオン・オフさせます。

 

ある種の癌細胞は活性化しているT細胞の受容体に付着して攻撃を停止させます。

 

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免疫チェックポイント阻害薬は癌細胞がT細胞の攻撃を停止させることを阻害する薬です。この薬の働きで、T細胞は腫瘍に浸透して、増殖を停止させます。

 

通常の化学療法薬は数週間で腫瘍を小さくしますが、免疫チェックポイント阻害薬は効果が出るまでに数ヶ月かかります。この薬は一時的に腫瘍を膨らませるため、腫瘍が増殖しているように見えます。この現象を偽進行と呼びます。この現象は多数のT細胞や他の免疫細胞が腫瘍の内部に入るために発生します。腫瘍が一時的に大きくなった後、腫瘍は小さくなるか、死滅します。

 

日本人による研究開発

 

この免疫チェックポイント阻害薬のアイデアは京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)氏の研究チームで生まれました。

 

研究チームはマウスによる研究から免疫細胞のPD-1のタンパク質が自己の暴走を止める役割があることを突き止めました。

 

研究チームは日本の製薬会社に対してこの薬の製品化を持ちかけましたが、どの会社も製品化に難色を示したため、アメリカのベンチャー製薬会社メダレックス社が製品開発を行うことになりました。

 

一般的に抗がん剤は、耐性があり、長期の使用により効果がなくなります。

 

免疫チェックポイント阻害薬は、直接癌を攻撃するのではなく、免疫細胞を活性化させることにより癌を攻撃します。免疫細胞は様々な変異を認識することができるので、癌細胞は逃れることが出来なくなります。

 

臨床

 

メダレックス社を買収したブリストル・マイヤーズスクイブ社と日本の小野薬品工業が免疫チェックポイント阻害薬オプジーボを共同開発しました。

 

日本では、小野薬品工業が、2014年7月に根治切除不能な悪性メラノーマの治療薬として、オプジーボの製造販売承認を世界に先駆けて取得しました。これにより、オプジーボは世界で初めて承認を取得したPD-1免疫チェックポイント阻害薬となりました。

 

米国では、2014年12月、FDAにより、イピリムマブとBRAF阻害薬の治療で効果が見られなかった進行性メラノーマに対して、オプジーボの使用が認可されました。

 

2015年6月、欧州医薬品委員会(CHMP)は悪性黒色腫(メラノーマ)の治療にオプジーボの使用することを承認しました。

 

米国での治験では、非小細胞肺がん、前立腺がん、大腸がん、腎細胞がんなどの固形がん、および悪性黒色腫(メラノーマ)を対象に投与する試験が実施され、いずれも有効例が認められています。

問題点

 

オプジーボは高い有効性がありますが、高い副作用発生率、それに非常に高い価格(1人あたり年間3500万円)が問題となっています。

 

日本発の画期的な薬が、アメリカとの共同開発で非常に高額な薬となってしまいました。再生医療ではこの轍を踏まないように、日本チームには頑張って頂きたいものです。

 

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