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新しい放射線治療法 -- ホウ素中性子捕捉療法

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原子力施設での癌治療が病院でも可能になる!

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国立癌研究センター中央病院は中性子線を活用して癌を治療する施設が完成し、2017年春から治験を開始するとの報道がありました。

 

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イメージ出典:国立癌研究センター中央病院ホームページより

 

新たな治療法はホウ素中性子捕捉療法(BNCT: Boron Neutron Capture Therapy)と呼ばれる方法で、通常の生体内元素の数千倍の核反応を中性子と起こすホウ素製剤BPA(p-boronophenylalanine)を、注射により腫瘍細胞に集積させ、そこに中性子を照射し、病巣内部に限局的な核反応を起こします。 核反応により生じた重荷電粒子は、従来の放射線療法と比べ、はるかに大きな線量を腫瘍細胞のみに照射することができ、これまで治療不可能であった病巣にも著しい損傷を与え治療できる大きな可能性を持った治療法です。

 

これまでは、中性子源を原子炉に依存していることから、新しい治療法を広く利用できませんでしたが、同院では直線加速器を中性子源に用いることにより、小型で安全な病院設置型BNCTシステムを開発しました。

 

 

概念

 

BNCTは正常細胞には影響が少なく、癌を細胞単位で非侵襲的に死滅させる事が可能な治療法です。

 

放射線治療は一般に、正常細胞も癌細胞も同じような影響を与えるため、放射線を照射する領域を正確に決定することが重要でした。

 

原理

 

癌細胞に取り込まれやすいホウ素-10を含んだ化合物を予め癌患者に点滴などで投与し、ホウ素-10化合物を癌細胞に集積させます。

 

体外からエネルギーの低い中性子を患部に照射し、中性子を生体内の癌細胞に到達させます。正常な細胞では、エネルギーの低い中性子は殆ど影響も与えず通過していきます。

 

中性子が癌細胞内のホウ素-10に到達すると、反応が起こりアルファ線(α線)が発生します。α線が癌細胞を死滅させます。

 

従来の手法

 

BNCTは新たな癌の治療法として有望な治療法です。これまでは、エネルギーが低く、人体に影響のない中性子を得るために原子炉が使用されてきました。

癌患者に取って原子炉施設での治療は非常に不便でまた安全面でも問題がありました。

 

新たな手法

 

中性子源として原子炉の代わりに小型な加速器の開発が進められ、現実のものになりました。これにより、医療機関がBNCTを使用した治療を行うことが可能になります。

 

原子力施設でしか行えなかった癌治療が近い将来病院でも可能になります。