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肥満と癌の関係

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減量しただけでは肥満の悪影響から逃れられないかも知れない

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「Journal of the Nation Cancer Institute」に肥満と癌の関連についての記事が出ていました。概要を紹介します。

 

ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究チームは肥満と癌の関係を研究しており、様々な癌の危険因子を解明しています。

 

癌の危険因子の1つが肥満です。肥満に関係する癌として膵臓癌、大腸癌、子宮内膜癌、およびホルモン受容体陽性閉経後乳癌を含む少なくとも10種類が関係しています。多くの疫学研究から、癌と肥満の関係を示す証拠が多数見つかっています。

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体の脂肪蓄積記憶

 

体力を維持しながら体重増加が防げたらインスリン耐性や体内のホルモン循環レベルの上昇のような代謝の不均衡を防止することが可能になります。

 

代謝の不均衡を避けることにより2型糖尿病、心臓病、子宮内膜癌、閉経後乳癌、や大腸癌のリスクを減少させることが出来ます。

 

減量により肥満に関係する癌のリスクを低減出来るかを調べる研究は大変な作業です。この研究には長期の追跡調査と、肥満の人と減量に成功した人を区別する込み入った要因があるからです。

 

肥満に関連するマーカーが減量後も存在し、これのマーカが癌の増殖にどのように影響を及ぼすかを理解するために、同研究チームは3種類のマウスのグループとして肥満グループ、正常体重グループ、減量したグループにそれぞれ乳腺腫瘍を発症させました。

 

体重の標準化とインスリンとレプチンレベルの標準化にもかかわらず、減量したマウスのグループと肥満マウスのグループで同様に腫瘍が増殖し乳腺組織に同様な循環炎症マーカーが認められました。

 

これら両グループの乳腺組織におけるDNAメチル化は標準体重のグループより高くなり、減量したグループでは肥満状態が後成的に記憶されていることを示しています。研究成果から減量しただけでは肥満の悪影響から逃れられないことを示しています。

 

マウスにおける研究結果が人間にも当てはまるか調べたところ、慢性肥満にお肥満状態が後成的に記憶されていることが分かりました。研究チームは更に、減量の値や体重の減量方法(例えば、食事のみか、食事と運動、肥満外科手術)が発癌リスクに関係しているかを研究しています。

 

少数の人を対象にした研究から、急激に減量を行うと、肥満による癌発生リスクが低減することが分かりました。この研究からは、肥満外科手術を受けると、乳癌や子宮内膜癌を含む癌発生リスクが低減できることが分かりました。

 

バージニア・ヘルス・システム大学の研究チームが行った遡及研究によれば、肥満外科手術を受けた患者の内、3.6%が主として乳癌、子宮頸癌、及び子宮内膜癌を発症し、肥満外科手術を受けない病的に肥満女性の5.8%が癌を発症しました。他の遡及研究によれば、肥満外科手術を受けると、子宮癌の発症リスクが71%低減し、肥満外科手術を受けた後標準体重を維持できれば81%リスクが低減しました。

 

どの代謝要因が癌に関係しているか?

 

バージニア・ヘルス・システム大学の研究チームは患者に行った肥満外科手術により代謝要因が変化したことに注目しています。

 

過去25年で子宮内膜癌の患者数が飛躍的に増加しました。この主たる原因は肥満です。これまで、肥満の主たる原因はアロマターゼ酵素により余分なアンドロゲンが脂肪組織内でエストロゲンに変化することだと考えられてきました。

 

しかし、ホルモンのみでは肥満の説明がつきません。成長因子、インスリン、炎症、及びホルモンの多数の経路があるため、癌発生リスクを1つの要因に絞り込むことは困難です。

 

バージニア・ヘルス・システム大学の研究チームは肥満に関係する癌にリスクが高く肥満外科手術を受けた女性患者の代謝変動を調べたところ、炎症の減少とともにグルコース、インスリン、及び遊離脂肪酸のレベルが改善していることが分かりました。この結果、同チームは患者が減量すれば、インスリンやグルコースの平衡維持力が改善すると考えています。しかし、この改善が将来に渡り癌の防止に効果があるかは不明であると言っています。

 

リスク・マーカー

 

脂肪の量だけでなく、膵臓や肝臓などの内臓脂肪は心臓病、2型糖尿病、およびある種の癌の危険要因だとされています。内臓脂肪は多くの種類のホルモンを分泌し、グルコースの代謝に影響を及ぼし炎症を起こします。

 

バンクーバのブリティッシュ・コロンビア大学の研究チームは、特定の脂肪蓄積と代謝緩和関係する経路を分析して、皮下脂肪と、内臓脂肪と、全体の肥満度指標に関係した血流内の代謝産物探すことにより原因代謝因子の特定を試みました。

 

注意深く分析して得られた脂肪蓄積は乳房の白色脂肪組織でした。

 

ニューヨークのウエイル・コーネル医学校の研究チームによれば、ほとんどの乳癌を患った肥満した女性には乳房の白色脂肪組織に炎症が見られ、エストロゲンの生体合成調整酵素であるアロマターゼのレベルが上昇していることが分かりました。

 

脂肪組織における炎症やアロマターゼの発現により乳癌が増殖しているので、これらは乳癌のリスクのマーカーとして利用できるかもしれません。

 

想定されているように、アロマターゼが乳癌のターゲットかもしれません。臨床試験により、乳癌リスクが高い女性がアロマターゼ阻害薬を服用すると、リスクが50%も低下することが分かりました。

 

全身のメタボリックシンドロームも乳癌リスクを高めていました。

初期の乳癌の女性の約半数に乳房に白色脂肪の炎症があり、さらにグルコース、トリグリセリド、やメタボリックシンドロームのマーカーである他の因子の数値も上昇していました。

 

転移性乳癌の症状が悪化しているの女性には、炎症が見られました。

従って、炎症はメタボリックシンドロームと乳癌リスクの関係を理解する上で重要です。もし炎症ががインスリン耐性を含む複数の病状に影響するなら、抗炎症戦略はインスリンを単に標的にするより効果があるかもしれません。

 

標準体重の女性における乳癌の原因は不明であるため、ニューヨークのウエイル・コーネル医学校の研究チームは代謝的に肥満で、標準体重の女性における脂肪炎症とアロマターゼのレベルの関係を調べています。同研究チームは潜伏性の乳房脂肪炎症は標準体重の女性の乳癌のリスクに関係していると考えています。

 

同研究チームは炎症とアロマターゼのレベルの両方を反映する代謝マーカーを開発して乳癌のリスクを非侵襲的に計測するための研究に着手しています。

 

近年、肥満と癌の関係が徐々解明されてきています。減量しただけでは肥満の悪影響から逃れることは出来ないかも知れませんが、他の生活習慣病のリスクを考えた場合、減量は絶対必要です。

 

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