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医学よもやま話

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神の技術かそれとも、悪魔の技術か?

脳科学

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人の心を読み解く技術

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カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが言葉の意味は脳のどの領域にエンコードされるかを突き止めました。ネーチャーが論文を掲載しています。

 

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研究チームは大脳皮質における基本単語の意味がエンコードされる場所を示した言語地図の作成に成功しました。

 

「dog」は多くの意味があり、人によって「ペット」、「狂犬」、「盲導犬」など様々です。単語の意味は脳の複数の領域にエンコードされました。血流が脳の50,000領域に流れることが分かりました。

 

実験では各被験者をfMRIスキャナーに入れ、2時間、物語を聞かせ、大脳皮質の異なる領域での血流と酸素供給の変化データを集めました。

 

話しを音素単位で再生した結果、各被験者の脳の画像データが一致することが分かりました。従って、人間は同じ言語地図を共有していることが判明しました。

 

情報は単語埋め込みアルゴリズムに送られ、単語の意味がどの位近いかにより重み付けが行われました。

 

結果はシソーラス型の地図に変換され、単語は本のページの代わりに左右の大脳半球の平な皮質に並べられ、様々な見出しで分類されました。

 

この結果、人間の脳がどのように言語を構成しているかを示す言語地図が作成出来ました。

 

この地図により人間の脳の多くの領域が抽象概念ではなく、人や社会の関係で言語を表していることが分かりました。

 

言語地図から言語に対する反応が皮質の数カ所の広い領域にエンコードされることが予測でき、脳の各領域がどのような情報を示すかが分かります。この地図は脳の今後の研究に大きな可能性を与えます。

 

言語は左大脳半球のみで処理されるのではない

 

長年、人間の左大脳半球で言語が処理されると考えられてきました。研究結果から、左大脳半球のウェルニッケ野やブローカ野は言語を処理しますが、主として発音を処理することが分かりました。

 

しかし、これらの脳の領域は言語の理解には関係しておらず、言語の意味は完全に異なるレベルで行われていることが分かりました。

 

意味の概念は脳の複数の領域で表現され、「dog」と言う単語では、多くの脳の領域が関与していました。

 

高レベルの認知に関与する領域を含む大脳皮質の少なくとも1/3が言語の処理に関係していることが分かりました。

 

言葉が話せないとき

 

脳が異なる単語を意味によりどのように構成しているかを示す詳細な地図を作成することにより実質的に脳卒中、脳の障害、またはALSのような運動神経の疾患で話すことが出来なくなった人に声を与える手助けとなります。

 

人の心を読む技術は現在のところ夢物語ですが、脳の中で言語がどのように構成されているかの地図ができれば、心の中に分け入ることが可能になるかもしれません。

 

話すことが出来ない患者の脳の動きを調べ、このデータを言語地図と合わせることにより、患者が何を伝えたいかが分かるようになります。他の可能性として、人が話すことを他の言語に翻訳する解読器が考えられます。

 

データに基づいた計算により人間の豊かさと複雑さな脳の認知処理を理解することができます。

 

今後の研究

 

「dog」のような単語の意味が世界共通か世界中の被験者を対象に実験して解明する必要があります。今後は、世界共通の言語地図を作成するために非英語圏の被験者や第2言語が英語の被験者で実験を行う必要があります。

 

人間の遺伝子配列が突き止められたように、将来意味がエンコードされる脳の領域も突き止められ、脳卒中患者の失語症の治療や自動翻訳機の開発につながるかもしれません。

 

しかし、反面、今回の研究で得られた言語地図を使用することにより、人の心が解読できる可能性があり、悪用される恐れもあります。

 

技術は、使い方によっては神の技術となったり、悪魔の技術になったりするのです。

 

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Keywords

ブローカ野 Broca’s area;大脳皮質 cortex;失語症 aphasia;音素 phoneme;ウェルニッケ野 Wernicke’s area