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医学よもやま話

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抗生物質と耐性菌

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人間も進歩するが、細菌も進歩する!

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微生物を死滅させるために抗生物質が使われています。

 

微生物(細菌、真菌、ウイルス)は最初は人体の防御をすり抜ける手段を持ちませんが、時間をかけてすり抜ける手段を獲得します。例えば、ある種の微生物は繰り返しペニシリンに暴露されることにより、ペニシリンに耐性を持つ事ができます。

 

1940年代の半ばにペニシリンが使用されるとすぐに、スタフィロコッカス・アウレウス菌はペニシリンの効果を無効にする遺伝子を獲得しました。

 

 

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ペニシリンの化学式

 

ペニシリンが感染の治療に使われると、この特殊な遺伝子を持った細菌が生存優位性を持つようになりました。

 

スタフィロコッカス・アウレウス菌はペニシリンで殺されましたが、ペニシリンに耐性を有する細菌が増殖し時間をかけて普通の細菌となりました。

 

薬学者はペニシリンの分子を変化させて、類似の薬剤であるメチシリンを作りました。この薬剤はペニシリンに耐性を持つ細菌を殺すことができました。メチシリンが使用されるとすぐに、スタフィロコッカス・アウレウス菌はメチシリンに耐性を持つ遺伝子を作り出しました。この細菌はメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス菌と呼ばれました。

 

 

ある種の細菌は先天的にある種の薬剤に対して耐性を持っています。

細菌は耐性を持つ他種の細菌から遺伝子を獲得するか、遺伝子が変異することにより薬剤に対して耐性を獲得します。

 

薬剤耐性をコードした遺伝子は細菌の次の世代に引き継がれるだけでなく、他の種類の細菌にも引き継がれることがわかりました。

 

抗生剤を頻繁に使うと、耐性菌がすぐに出現します。従って、抗生剤は必要なときにしか使用することができません。

 

風邪の症状の細菌感染のない患者に抗生剤を使用すると、患者は症状が良くならないだけでなく、耐性菌を作りだしてしまいます。抗生剤は広範に使用(誤用)されていますので、多くの細菌が抗生剤に耐性を持つようになっています。

 

耐性菌は人から人へと伝染します。グローバル化により、耐性菌は短時間で世界の多くの地域に伝染します。

 

これらの細菌が病院内で伝染することは特に問題です。病院内では抗生剤が普通に使用されているため、耐性菌が病院内で蔓延しています。病院関係者や患者は適切な衛生手順を順守しないとこれらの細菌を拡散させる恐れがあります。

 

また、多くの入院患者は免疫機能が弱っているので、より感染に罹りやすくなっています。

 

耐性菌はまた動物からも人に感染します。家畜の成長を促進したり感染病を予防するために、健康な動物に対して抗生物質が大量に投与されています。このため、家畜には耐性菌が蔓延しています。

 

医療従事者は抗生物質の知識を有していますが、農畜水産業者は生産に用いられる抗生物質に対してはあまり注意を払っていないのが実情です。農畜水産物への抗生物質の使用量は医療用抗菌薬使用量のおよそ 3倍であると言われています。耐性菌出現の原因がすべて医療における抗生物質使用によるものではなく、農畜水産物の生産現場での使用によるものが大きいと考えられています。

 

人間は病気を治すために抗生物質を見つけ出しましたが、細菌も殺されないように遺伝子を変異させて抗生物質に耐えられるように変異しています。人間も

 

進歩するが、細菌も進歩するのです。

 

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Keywords

遺伝子 gene抗生物質 antibiotics;スタフィロコッカス・アウレウス Staphylococcus aureus bacteria;耐性菌 resistant bacteria;微生物 microorganism;ペニシリン penicillin;メチシリン methicillin