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医学よもやま話

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熊本地震とクラッシュ症候群

外科

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熊本地震では多くの方が家屋の倒壊に会い、瓦礫や、倒れた家具の下敷きになるなど被害者が続出しています。長時間体を挟まれた人で自力で抜け出て、比較的元気であっても、容態が急変し死に至る場合があります。この致死性の高い症候をクラッシュ症候群と言います。

 

柔軟組織、特に骨格筋が長時間に渡り強い圧迫を受けたために外傷および虚血が起こります。細胞膜の浸透性が増加し、細胞からカリウム、酵素及びミオグロビンが流れ出ます。血圧の低下や腎臓への灌流の減少に付随して、虚血性腎不全が起こり、尿細管壊死や尿毒症が発生します。

 

 

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クラッシュ症候群の特徴

  • 血液量減少性ショックが起こる(損傷した筋肉細胞における水分の滞留による)。
  • 高カリウム血症になる(損傷を受けた筋肉細胞からのカリウム流出による)。
  • 代謝性アシドーシスとなり、乳酸などの酸が血中に貯溜し, 血液 pH が正常域より下がる(損傷を受けた筋肉細胞からの細胞内のリン酸塩と硫酸塩が流出することによる)。
  • 急性腎不全が起こる。
  • 播種性血管内凝固症候群(本来出血箇所のみで生じるべき血液凝固反応が、全身の血管内で無秩序に起こる症候群)が発生する。

 

 

 

 

クラッシュ症候群では次の症状がでます。

  • 骨格筋の大規模な圧迫障害。
  • 圧迫肢における感覚−運動障害(手足の緊張、腫れ)。手足/身体の一部が無脈)。
  • ミオグロビン尿症及び/またはヘモグロビン尿症。早期に尿が紅茶色になる。
  • 血液量減少ショックによる尿量過少症。
  • むかつき、嘔吐、錯乱、動揺が起こり、尿素、クレアチニン、尿酸、カリウム、リン酸塩、およびクレアチンキナーゼの値が上昇する。低カルシウム血症を示す。

 

合併症

  • 高カリウム血症や感染症により死に至る。高カリウム血症は不整脈や心不全が起こる。
  • 急性腎不全が起こる。
  • 狭い所に閉じ込められていたため筋肉細胞への水分の取り込みにより、筋区画症候群が発生する。内圧上昇により循環障害が起こり、筋や神経の機能障害が生ずる。
  • 大量に組織が損傷すると播種性血管内凝固症候群に至る。

 

クラッシュ症候群が疑われたら、致死率が高いため、点滴、薬剤投与、筋膜切開術、有害物質の透析除去が必要となる場合があります。拠点病院への緊急搬送が必要となります。

 

近所住民も、クラッシュ症候群は致死性が高いために、倒壊家屋に挟まれていて、自力で脱出し、元気そうにしていても、直ちに医療関係者に知らせ、一刻も早く治療が受けれるようにしなければなりません。

 

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虚血 ischaemia;筋区画症候群 Compartment syndrome;筋膜切開術 Fasciotomy;クラッシュ症候群 crush syndrome;高カリウム血症 hyperkalaemia;錯乱 confusion;心不全 arrest;腎不全 kidney injury;代謝性アシドーシス metabolic acidosis;低カルシウム血症 hypocalcaemia;尿量過少症 oliguria;尿細管壊死 tubular necrosis;尿毒症 uraemia;播種性血管内凝固症候群 disseminated intravascular coagulation;ミオグロビン尿症 myoglobinuria