医学よもやま話

医学情報をご提供します。

善玉菌と悪玉菌

advertisement

腸内細菌が癌のリスクを低減する

****

 

人間の腸内に存在している細菌は人間と共存する菌種があります。人間が食べた物に含まれる栄養分を発酵することにより増殖し、様々な代謝物を作り出します。腸内細菌は、食物繊維を短鎖脂肪酸に変換して人間にエネルギーを供給したり、外部から侵入した病原菌が増殖するのを防止するなど、人間の健康維持に寄与しています。しかし、菌が腸以外に侵入した場合や、抗生物質により腸内細菌相失われると、人間は病気を発症することになります。従って、腸内細菌は人間の生命に大きく影響を及ぼしています。

 

 

f:id:tpspi:20160414162330j:plain

写真出典:特許公開公報2009-232702

 

様々な種類の腸内細菌により、人間は肥満になったり、肥満が防止されたり、病気を発症したりします。UCLAの研究チームの発表によれば腸内細菌はある種の癌のリスクを低減する可能性があることが判明しました。

 

抗炎症性の善玉腸内細菌はある種の癌の成長を遅くしたり停止させることがわかってきました。

 

最終的に、体内の腸内細菌の量と種類を調べて、腸内細菌を抗炎症作用がある菌と置き換えまたは増やすような善玉菌を処方することにより、人間の癌発症リスクが低減できるかもしれません。

 

この治療法は侵襲性がなく治療が非常に容易です。

 

数百万年の時を経て、腸内細菌は善玉と悪玉に分かれました。善玉菌は抗炎症作用があり、悪玉菌は炎症を促進させます。人体には10兆個の細菌が生息しています。これに対して、人体の細胞の数は1兆個にすぎません。

 

研究チームは善玉菌のラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)456を見つけ出しました。この腸内細菌は医療以外でも有効に使用されています。この腸内細菌はラクトバチルス株として、ヨーグルト、ケフィア(ウシなどの乳を発酵させた飲料)、紅茶キノコ、やザウアークラウトを作るときに使われます。

 

この腸内細菌は遺伝子の損傷を抑制し、炎症を顕著に低減させます。炎症は癌、神経変性疾患、心臓病、関節炎、や狼瘡などの多くの疾病や加齢に於いて主要な原因となります。

 

研究チームが以前行った研究で、腸内の微生物相と免疫系で発生する癌であるリンパ腫の関係が明らかになっています。今回の研究では、この微生物相が癌の発生を遅らせ、善玉菌のサプリメントにより癌の発生を防ぐことができることが示されました。

 

この研究では、毛細血管拡張性運動失調症と呼ばれる神経障害を引き起こすATM遺伝子に変異のあるマウスが使われました。この疾患は人間100,000人に1人の割合で発症し、白血病、リンパ腫、および他の癌を引き起こすことが知られています。

 

マウスは2つのグループに分けられ、一方のマウスのグループには抗炎症性の菌が投与され、他方のマウスのグループには腸内で共存する炎症性の菌と抗炎症性の菌を混合したものが投与されました。

 

マウスの善玉菌の量が多ければ多いほどリンパ腫の発生が遅くなることがわかりました。

 

今回の研究では、マウスの尿と糞における腸の自然代謝作用で産生される分子が分析されました。善玉菌のみが投与されたマウスのグループで癌を防止する代謝産物が作り出されることが判明しました。このマウスのグループでは癌のリスクを低減させる有効な脂肪があり、酸化代謝を行っていました。

 

善玉菌のみが投与されたマウスのグループではリンパ腫の発生は他のマウスのグループより遅れ、2倍の時間がかかりました。さらに、善玉菌を投与されたマウスのグループの寿命は他のマウスのグループより4倍長く、DNAの損傷や炎症の発生も減少しました。

 

これらの実験結果から腸内細菌を調整することにより癌の発生の防止や抑制することが出来、腸内微生物相を作ることにより遺伝子型から独立して中央炭素代謝に影響を及ぼし変更することが出来ることがわかりました。将来は、善玉菌含有のサプリメントにより正常な人間の化学的予防が可能となることでしょう。さらに、同じ微生物相により癌に罹患しやすいグループでも腫瘍の発生が抑制できる可能性がでてきました。

 

善玉菌により癌に罹りやすい人も救えるかもしれません。

 

Keywords & Related Topics

化学的予防 chemopreventive;細菌 microbe;酸化代謝 oxidative metabolism;善玉菌 probiotics;中央炭素代謝 central carbon metabolism;腸内細菌 intestinal bacteria;腸内微生物相 intestinal microbiota;ラクトバチルス・ジョンソニ Lactobacillus johnsonii