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医学よもやま話

医学情報をご提供します。

幻覚薬と人間の可能性

脳科学

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LSDの心理療法への応用

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数年前、危険ドラッグ使用者により悲惨な事件や事故が多発し、社会問題化しました。この結果、規制が強化され、最近では危険ドラッグについてのニュースはあまり耳にしなくなりました。

 

しかし、スポーツ界や芸能界の薬物汚染は現在でも深刻でメディアをにぎあわせています。

 

幻覚薬は脳神経に作用して、使用者に異常な感覚を体験させるものです。その幻覚作用は古来より宗教等に使用されてきましたが、幻覚薬は常習性があり、使用者の精神状態を狂わせ、異常行動を取ったり、他人に危害を加えることがり、また社会に蔓延することを防ぐために、その製造、販売、使用やは厳しく取り締まられています。

 

幻覚薬が人に与える幻覚作用は取り締まりの対象だけではなく、心理療法の研究にも応用されています。

 

LSDはかってヒッピーが使用する薬でしたが、ここ数年シリコンバレーで生産性向上の研究にも使用されています。

 

イギリスで脳をスキャンしてLSDが精神に及ぼす効果について研究が行われ、成果が公表されました。

 

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LSD摂取により幻覚症状を示した被験者の脳内の状態(右);偽薬を摂取した被験者の脳内の状態(左)

 

LSDを摂取して幻覚症状が現れた被験者の脳のスキャンを行い、幻覚薬により意識が変化したときの脳神経の状態を示すことに成功しました。

 

研究結果からLSDは脳のネットワークの結合を緩め、通常相互作用を行わない脳のネットワークの結合を強化することがわかりました。

 

通常、我々の脳は注意力のような複雑な精神活動と共に視覚、運動感覚、聴覚のような特殊機能を行う独立したネットワークから成り立っています。

しかし、LSDを使用すると、これらのネットワークの分離が無くなり、脳が統合して活動します。

 

被験者にLSDを摂取させて、幻覚状態を起こさせ、脳をスキャンしました。fMRIと脳磁図記録法を使用して血流と電流の変化を検出して脳の活動を測定しました。

 

LSDを摂取した被験者の脳のスキャンと偽薬を摂取したした被験者の脳のスキャンが比較されました。

 

LSDを摂取した被験者のスキャンから脳の状態が精神病と全く異なるわけではない事がわかりました。すなわち、通常、独立している脳のネットワークが互いに情報交換を行なっていました。特に、視覚皮質が脳他の部位とより情報交換を行っており、LSD使用者が鮮明で感情的な幻覚を経験していることがわかりました。

 

LSDによる幻覚症状が起こると、柔軟性のある思考、特異な関連付けと知覚、鮮明な視覚、および強化された創作性が実現できるかもしれません。

 

児童の思考は柔軟性がありますが、歳を重ねていくうちに徐々に硬直化してきます。従って、LSDは大人に児童のような驚きと想像力を与える可能性があります。

 

脳の結合性を強化することにより、自我の分離と関連した脳の変化に対する手がかりが得られるかもしれません。すなわち、自己の通常の感覚を失い、自己と、他者と、世界を再結合させる感覚です。

 

自我の分離はLSDやシロシビンのような幻覚薬を摂取する人が経験しています。

 

脳内のセロトニン受容体がLSDにどのように作用するかについて解明されていますが、これらの化学変化がどのようにして意識に長期間の幻覚を引き起こすかは明確になっていません。

 

神経作用や幻覚の治療効果に対する研究が促進され、LSDを使用した精神療法は鬱病、依存症、などに対するの治療法が見つかるでしょう。

 

LSDのような幻覚薬がどのように通常の脳の状態を変化させるかを調べることにより、生命現象としての意識が解明できるかもしれません。今後、LSDが治療のツールとして使用されることが予想されます。

 

脳の研究に幻覚薬が重要なツールとなるでしょう。

 

Keywords & Related Topics

機能核磁気共鳴断層 functional magnetic resonance imaging;偽薬 placebo;幻覚薬 psychedelic drug;視覚皮質 visual cortex;シロシビン psilocybin;心理療法 psychotherapy;精神病  psychosis;精神療法 psychotherapy;脳磁図記録法 magnetoencephalography