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ヤンキーズの田中将大投手は今年(2016年)4月6日開幕戦で登板予定です。アストロズのダラス・カイケルとの投げ合いが注目されています。

 

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田中投手は昨年10月に肘から骨棘(骨の一部が棘状に突出したもの)を取り除く手術を受けました。このよう大掛かりの手術を受けたのは初めてで、本人は投球に少し不安があるとは言ってはいますが、好調に仕上がっているとジョー・ジラルディ監督が太鼓判を押しているとの報道がありました。

 

田中投手は今年がメジャー3シーズン目ですが、故障でフルシーズン投げ切ったことはありません。骨棘除去手術を行う前、彼は右肘の靭帯損傷をおして登板していました。

 

田中投手が昨年患った病態は変形性肘関節症です。

変形性肘関節症はヒジ関節を酷使した結果、関節炎などが原因として起こり、関節軟骨の摩耗により骨が関節面に露出し、内側では骨棘が生じます。骨棘は関節のスムースな動きを妨げ、病態の進行により骨棘が折れて関節内に浮遊し、これが関節の固化の原因となります。

骨棘除去手術は関節鏡視下で行われ、骨棘、滑膜除去、遊離体摘出が行われます。関節鏡視下手術は関節の周囲の皮膚面に2~3箇所の小さな穴を開け、その後、関節内に生理食塩水を注入し、内視鏡を使用して損傷部位の修復や、骨棘、滑膜、遊離体などの損傷組織を摘出除去します。モニターを使用した患部拡大投影により、損傷部を微細に観察、手術が可能です。

 

人間は若ければ、体の故障はなく、歳を取るにつれて、障害が出てくるくものですが、スポーツ選手はトレーニングで通常の人間の数倍も体を酷使します。そのため、スポーツ選手には怪我がつきものです。

 

スポーツ科学の発達により、選手が怪我をしないようにトレーニングが行われるようになりました。

 

しかし、プロの世界、とりわけメジャーリーグでの選手の年俸は日本での年俸の4から5倍が支払われています。そのため、経営の面から投手のローテンションの人数を増やすことが出来ません。メジャーリーグでは投手は無理を強いられ、怪我人続出の事態に陥っています。メジャーリーグの日本人投手は何らかの手術を受けています。テキサス・レンジャーズのダルビッシュ投手やソフトバンクホークスの松坂大輔投手は肘の靱帯断裂の手術(トミー・ジョン手術)を受けています。

 

人間には自然治癒力が備わっています。生体幹細胞が細胞分裂を起こし、損傷部は修復され、トレーニングを積めば、筋力は強化されます。しかし、プロスポーツの世界では、損傷部が修復される前に、体を酷使するため、損傷部が完全に治癒しません。損傷が重い場合や、治癒を早めるために手術を受けることになります。

 

メジャーリーグの投手たちは人生を高速モードで演じさせられているのかもしれません。

 

Keywords

骨棘 bone spur;変形性肘関節症 elbow osteoarthritis;靭帯損傷 ligament injury;滑膜 synovial membrane;遊離体 joint loose body;靱帯断裂 ligament rupture;自然治癒力 self‐healing power;靱帯損傷 torn ligament;成体幹細胞 tissue stem cell