医学よもやま話

医学情報をご提供します。

夜盲症 ― 網膜の桿体の障害

夜間の運転は事故を起こしやすくなる。 **** Photo: 夜間の運転が危険になる 夜盲症は夜間に目の視力が低下する症状である。 夜盲症にかかると、夜間や暗いところでは、平均以下の視力しか得られない。夜盲症は基礎疾患の症状であり、加齢により多発する…

高齢者に対する薬剤の作用 ― 薬物動態と薬力学

高齢者には薬剤の効果が強く長く出る。 **** Credit: Introduction to Pharmacokinetics, learnpkpd 高齢者は薬剤による障害のリスクが高い。理由として、複数の持病の治療のため複数の処方薬を服用しており、加齢により薬物動態と薬力学が変化している…

網膜の桿体と錐体の違い

モノクロの暗所視とカラーの明所視 **** Credit: Rods and Cones of the Human Eye, School of Life Science 目の角膜から入った光はレンズと水晶体を通っては網膜の桿体と錐体に届く。桿体と錐体は入射光を神経インパルスに変換する。 光は網膜桿体と錐…

高齢者の薬剤療法

長期に服用している薬が老人の寿命を縮める事がある **** 高齢者の薬剤療法の問題点 高齢者には薬剤療法が妥当でない場合が多い。 高齢者に薬剤療法が必要な場合は、最も毒性の低い薬剤が選択されるべきである。 処方される薬剤の種類と用量は最小で、効…

吐き気と嘔吐

胃腸障害と非胃腸障害に分類される。 **** 吐き気 吐き気は嘔吐が切迫した不快な感覚である。 嘔吐 嘔吐は胸腹筋肉組織の圧迫により十二指腸及び幽門洞の逆方向収縮により胃内容物が口腔に排出されることである。 2から3時間前に食べた物を嘔吐した場合…

昏睡と昏迷の違い

刺激に対する反応の有無 **** 昏睡 昏睡は目を閉じて、無反応の状態で、意識も覚醒もない病態である。患者は刺激を与えても意識を取り戻したり覚醒することはない。 昏睡には刺激に対して反射するレベルがある。昏睡は意識障害の中で最も重いものである…

高齢者の健康に影響を及ぼす要因

高齢者各人で健康状態が異なるわけ **** 病的症状 老人と若者や中年では同じ病気にかかっても症状が大きく異なる。 高齢者では複数の慢性疾患にかかっているのが普通である。65歳以上の高齢者の約半数は2つ以上の慢性疾患を罹患している。 高齢者が介護…

高齢者の本当の死亡原因

高齢者は複数の要因が重なって死に至る。 **** Photo: 介護施設の談話室、介護付有料老人ホーム アリア深沢 高齢者の死亡原因 日本人の65歳以上の高齢者の死因の1番目はガン、それに心臓病、脳血管疾患、及び肺炎が続いており、最初の3つの病気で全死亡…

慢性疾患と急性疾患の違い

治らない病気と治る病気 **** Credit: 人工透析、”How Does Dialysis Work?”, Christian Fite 慢性疾患 慢性疾患は長期に患う疾患であるが、通常、急性疾患より症状が軽い。しかし、進行性、全身又は体の一部の障害、最終的には死に至ることもある。慢性…

角膜と網膜の違い

角膜はピントを合わせ、網膜は光を信号に変える。 **** Credit: 目の構造、参天製薬 角膜 角膜は眼球の一番外側に位置している透明な繊維質の膜であり、他の部分より大きな曲率を有する最も重要な屈折面である。角膜は厚さが均一で血管がなく、強膜から…

盲腸、虫垂、虫垂炎の違い

日本人が盲腸というとき、それは虫垂炎を意味している。 **** Credit: 腹腔鏡下虫垂切除術、Laparoscopic appendicectomy、Brisbane Surgeon 盲腸 盲腸は英語では”cecum”で「一端が開口した空洞」を意味する。大腸の最初の器官で袋状であり、上行結腸と…

抗原と抗体の違い

抗原は抗体を作り出し、抗体は免疫系により抗原を破壊する。 **** Photo: Specific Immunity, Antibodies 抗原 抗原は多糖類又はタンパク質から作れれおり、ウイルス、細菌、及びその他の微生物の細胞壁、カプセル、鞭毛、毒素、又はフィムブリエのよう…

良性腫瘍と悪性腫瘍の違い

癌化しない腫瘍と癌化する腫瘍 **** Photo: オリンパス上部消化管内視鏡 腫瘍 腫瘍は組織の腫脹であり、細胞の分裂のコントロールが出来なくなり、限りなく増殖を続ける病変である。腫瘍は新しく、活発に成長を続ける組織であるため新生物とも呼ばれる。…

真菌と細菌の違い

カビとバクテリア **** Photo: 真菌としてのキノコ、裏五頭山荘 真菌はカビで、細菌はバクテリアとも呼ばれる微生物で、いたる所に存在する。これらの微生物は人体の表面や内部にも生存しており、通常は無害で人体の生物学的プロセスに寄与している。し…

鎮静剤と鎮痛剤の違い

神経の興奮を抑える薬と痛みを緩和する薬 **** Photo: 薬剤の常用は耐性と依存症を引き起こす。 鎮静剤 鎮静剤は過敏性、興奮性、及び神経質性を和らげる薬剤である。中枢神経の働きを抑えて、怠さを生じさせ精神活動を低下させる。 鎮静剤にはすべての…

心臓震盪 ― 前胸部の致死的な強打

前胸部への強打がスポーツにおける最大の原因である。 **** Photo: 訓練用AED、LIFEPAK CR-T 前胸部強打による心停止 前胸部に突然非貫通性で一見無害の衝撃をうけると、心室細動により心停止、その後死に至る。この病態を心臓震盪とよぶ。 心臓震盪は主…

電離放射線傷害の病理

イオンや遊離基が遺伝子を傷つけ突然変異や細胞死が起こる。 **** Credit: The Structure of DNA, MITx Bio イオンや遊離基による細胞の損傷 電離放射線は原子及び分子のランダムな衝突によりイオンや遊離基が発生し化学結合を切断するため、他の分子が…

メンデルソン症候群 ― 誤嚥性肺炎

低酸素血症性呼吸不全に至る疾患 **** Photo: Dr. Curtis Mendelson 全身麻酔患者が発症する疾患 1946年に産婦人科医カーティス・メンデルソン(Curtis Mendelson)が全身麻酔による無痛分娩の後では重度な誤嚥性肺炎が高率で発症していることを報告した…

嚥下と咳反射の機能不全 ― 誤嚥

気道保護メカニズムの障害 **** Photo: ガムを噛んで嚥下力を強化する。 誤嚥は気体以外の異物を肺に吸い込むことである。誤嚥物は主に胃内容物や口腔咽頭の分泌物である。 臨床的に有害な誤嚥 ほとんどの誤嚥は自然治癒する。臨床的に有害な誤嚥として…

電離放射線被爆 ― 突然変異、発癌、及び催奇

肺癌の主因は自然界のラドンである。 **** Photo: モニタリングポストでの放射線量表示 電離放射線 電離放射線とは物質に電離作用を行う放射線であり、高エネルギーの電磁波や粒子(X線、ガンマー線、電子、陽子、中性子、アルファー粒子)が含まれる。…

骨密度の測定 ― DEXAスキャン

骨密度を調べると骨粗鬆症による骨折のリスクがわかる **** Credit: DEXAによる骨密度の計測、DEXA and Bone Density Scans - Lexington Diagnostic Center 骨密度を測定する理由 体の任意の部位(腰部、脊椎、橈骨、全身、踵骨)の骨密度の低下は骨粗鬆…

圧迫性ショック ― 緊張性気胸と心タンポナーデ

胸部外傷による空気と血液が肺と心臓に重大な障害をもたらす **** Photo: 緊急心膜穿刺、Dr. Gaber Saied Mubarak 肺又は心臓の圧迫 肺又は心臓が空気、液体、又は血液で圧迫されると、右心室の拡張期充満または適切な換気や酸素供給ができなくなる。 肺…

救急搬送とプライマリー・サーベイ

命にかかわる傷害を見逃さない。 **** Photo: 救急搬送 救急搬送 統計によると、患者を病院に搬送する前に高度な救命処置を行うことより、応急処置と迅速な搬送が重要であることが判明している(注1)。 静脈アクセス 外傷患者に対しては迅速に輸液のた…

放射線肺障害 ― 肺癌の放射線療法による副作用

短期間で寛解するが、慢性化することもある。 **** Photo: 放射線標識 事故又は作業による放射線被曝は全身に障害が起こり、肺に対しては、最も毒性が強い。 放射線療法による肺炎 悪性腫瘍の治療では併用療法として放射線が使用される。副作用として肺…

二次性骨粗鬆症 ― アルコールを控えて骨折予防

治療により骨の消失が防止可能 **** Photo: 慢性的なアルコール摂取は骨の消失につながる 治療可能な骨粗鬆症 骨粗鬆症のほとんどは突発性であり、エストロゲン欠乏及び加齢が関係する細胞や分子の働きによるものであるが、二次性骨粗鬆症は治療により改…

酸素投与による肺の障害

高濃度の酸素供与は肺に有害である。 **** Photo: 酸素吸入用フェイスマスク 低酸素呼吸障害では酸素投与が必要になる。 急性呼吸窮迫症候群などの重度の低酸素症の場合、高濃度の酸素供与が長時間に渡り必要になる。しかし、空気に含まれている酸素より…

出血性ショック

大量出血による致死性ショック **** 大量出血 事故などによる出血や、消化器官の潰瘍または血管破裂、子宮外妊娠時の破裂などによる内出血のために、血液が急速に失われることがある。 症状 症状としては眠気や錯乱が現れる。皮膚は青白くなり、心拍数が…

致死性の高い傷害 

直ちに死に至る傷害と時間を経て死に至る障害がある。 **** Photo: 体に致死性の傷害を起こす弾丸 致死性の高い傷害の3つのモード 1番目のモード ― 心臓からの大量出血、大血管の裂傷、又は重大な神経損傷により患者の半数は数分以内に死に至る。 1番目…

一酸化炭素中毒 ― どこにもリスクがある

治療を誤ると神経精神的な症状に長く悩まされる。 **** Credit: 七輪の危険性、アウトドアまとめ 一酸化炭素は炭素含有の燃料を燃焼させると発生する。 炭素系燃料はいたるところで使われているため、煙を吸い込むことは一酸化炭素を吸い込むことである…

高齢者の骨の消失 ― ビタミンDとPPARG

骨吸収阻害治療により骨の消失を防ぐ **** Photo: 日光浴でビタミンDを作り出す。 ビタミンDの欠乏 老齢になると、特に80歳代や90歳代になると骨の消失が急激に進む。 骨の消失の主要な原因として、高齢者はビタミンD及びカルシウムの摂取が少なく、また…

胃癌の治療と予後 ― 根治手術と緩和手術

早期なら完治し、末期なら余命1年未満 **** Photo: オリンパス上部消化管内視鏡 外科療法 遠位の胃癌(幽門部の胃癌)では肝門と膵頭部のリンパ節とともに胃の部分切除を行う。 近位の胃癌(胃底部及び胃体部の胃癌)では胃の全摘出を行う。更に、死亡率…

火災で煙を吸ってはいけない理由

煙吸入と気道熱傷 **** Credit: 糸魚川大火、新潟テレビ21 火災による多くの人が煙を吸入して、熱傷により気道や肺に障害が起き、死に至っている。 熱傷罹患部位 煙が上気道に入ると熱は急激失われるため、直接の熱傷の多くは声門上気道に限定される。 …

潜水で起こる病気 - 減圧症

スキューバダイビングで起こる症状と治療 **** Credit: Scuba Diving, SDI TDI ERDI 水深6メートル以上の潜水を行うと周辺圧力の低下により、数分から24時間以内に体に症状が現れる。 症状の種類と程度は周辺圧力の変化の回数と大きさにより異なるが、個…

骨粗鬆症の原因は思春期に始まっている - 骨の形成

最大骨密度を得るには性ホルモンの分泌、栄養摂取、及び運動が必要 **** Photo: 筋トレ用ダンベル 骨芽細胞を調節する2つの経路 骨を形成する骨芽細胞には遺伝子調節され骨の形成速度に影響を及ぼす2つの経路がある。WNT/LRP5/βカテニン信号伝達経路と…

骨粗鬆症の病理

骨粗鬆症は骨の吸収と形成のバランスが崩れて起こる **** Photo: 身長計、ドイツ・ヘラー社 成人の骨密度は青年期の最大骨量と生涯における骨の損失により変化する。 これら2つの要因は骨を形成する骨芽細胞、骨を吸収する破骨細胞、及び骨の内部にある…

特定健診では早期の胃癌は見つからない

バリウム造影剤検査と上部消化管内視鏡検査 **** Credit: X線検査用バリウム造影剤、佼成病院 良性対悪性腫瘍 良性の潰瘍は底部が滑らかであるが、悪性の潰瘍の底部が不規則で、腫脹があり、不規則なひだがある。 従来、放射線検査で得られた腫瘍の特徴…

国が推奨する精度が低い大腸癌検査 - 便潜血検査

国が健康診断で推奨する本当の理由 **** Photo: 便潜血検査キット 便潜血検査は大便に血液が混じっていないか(潜血)を調べる生理学検査である。 大便中の潜血があると大腸癌や大腸又は直腸にポリープがある可能性が高い。しかし癌やポリープからの出血…

潜水急浮上で生じる潜水病 - 動脈ガス塞栓症 

窒素の泡が動脈を塞ぎ、虚血により臓器不全が起こる **** 動脈ガス塞栓症はガスの泡が動脈に入り血流を妨げることにより臓器が虚血して死に至る恐れがある病態である。 静脈ガス塞栓は症状が現れないが、心臓に左右短絡があると重大な脳卒中などの疾患が…

胃癌は検査を受けなければ、早期発見できない - 胃癌の症状と検査

胃癌は定期的に検査を受けて早期に治療できれば完治可能である。 **** Credit: 血液検査、My Blood Test 胃癌の症状と徴候 胃癌の初期段階では、症状が現れないか、特定な症状が生じないために、検査を受けなければ胃癌と気づかない。胃癌が進行すると、…

スキューバダイビングと減圧症 - 減圧症のシナリオ

気圧の変化で発生したガスの泡で臓器に虚血が生じる **** Photo: スキューバダイビングによる海底の撮影 潜水降下時 スキューバダイビングで潜水降下すると、周囲圧力が増大し、スクイーズによる顔や副鼻洞に痛みが生じる。 マスク内が陰圧になり、眼窩…

胃癌ができるわけ - 組織病理学要因と遺伝子要因

ピロリ菌感染と遺伝子メカニズムの変異 **** Credit: ピロリ菌、The Cause of Stomach Ulcers! 胃癌の組織病理学的要因 胃癌の組織病理学上の特徴として腫瘍の分化、胃壁への侵食、リンパ節転移、及び腫瘍内の印環細胞の有無がある。 この他の特徴として…

スキューバダイビングは適切な指導が必要 - 減圧症とは

急激に周辺圧力が変化すると神経障害や心肺障害が起こる。 **** Credit: スキューバダイビング、新島・式根島ロケーションボックス 周辺圧力の変化による疾患 周辺圧力が変化すると身体に様々な症状が現れる。その原因は空気が満たされている部位のガス…

骨のリモデリング ー 骨の吸収と形成

骨量が最大の時に運動、栄養摂取、睡眠が適切であれば、身長が伸び、将来の骨粗鬆症が予防できる。 **** Photo: カイザー バスケット ・ゴール セット 遺伝及び環境により骨が変化する。これを骨のリモデリングとよぶ。骨のリモデリングにより血液中にカ…

胃にできる悪性腫瘍

胃癌は初期段階では無症状であるが、進行すると最も痛みが出る癌の1つである。 **** 胃にできる腫瘍は大部分が悪性で、90から95%が腺癌である。悪性腫瘍としてまれに非ホジキンリンパ腫やや平滑筋肉腫が生じる。胃にできる良性の腫瘍として平滑筋腫、類…

高齢者の健康寿命に重大な影響を与える骨の健康

骨粗鬆症について **** Credit: Osteoporosis, National Osteoporosis Foundation 血圧、コレステロール、それに骨の健康 我々は定期的に血圧やコレステロール値を測定してるが、骨の健康に注意して定期的に検査を受けている人はほとんいない。 血圧が上…

富士登山で高山病にならないために

標高の高い山を短時間で登ると高山病にかかるリスクが高くなる。 **** Credit: 富士登山、夏の富士登山とご来光 2016年夏期の富士山の登山者数は24.8万人であった。そのうちの多くが弾丸登山を行った。 弾丸登山は、山小屋で宿泊するなど十分な休息をと…

食道癌の治療

癌治療で最も難しく、予後も悪い。 **** 手術治療 食道癌の治療の中心は手術である。医療技術の向上により、手術における死亡や手術後の死亡は減少しているが、未だ大掛かりで難しい手術である。手術には経胸腔手術、経裂口手術、及び根治的一括切除があ…

薬としてのコーヒー

適量なら薬、過剰摂取なら毒になる飲み物 **** Photo: コーヒーの実 コーヒーの歴史 コーヒーがいつ頃から飲まれるようなったかは不明であるが、伝説は数世紀前エチオピアの高原から始まる。ヤギ飼いのカルディーがコーヒー豆の可能性を最初に発見したと…

コーヒーをがぶ飲みしではいけない理由

カフェインは薬剤であり、過剰摂取は健康を害する。 **** 多くの研究からコーヒーは健康に有益であることが明らかになっている。この反面、過剰摂取は健康に悪影響を及ぼしていることも判明している。 業界は不利な情報は公表しないため、あまり知られて…

コーヒーは健康飲料か?

適量摂取は健康をもたらすが、過剰摂取は死につながる。 **** Credit: Coffee beans, Marketwatch コーヒーは国民的飲料で若者から老人まで幅広く飲まれている。コーヒー100mlには約60mgのカフェインが含まれている。 数多くの研究から、コーヒーには脳…